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長期金利1%でも国債暴落はない



5月22日に日本の長期金利の指標である10年物国債が1%を付けた。1%台の長期金利は、アベノミクスと黒田バズーカが始まった2013年以来だ。

一部のメディアやSNSでは、この長期金利の上昇を受けて「国債暴落説」が流布している。しかし状況を冷静に眺めると、残念ながら(?)国債は暴落しないだろう。

国債の空売りは意外にムズイ

国債が暴落するためには、当たり前だが誰かが売らなければならない。では誰が国債を保有しているのだろう。ご察しの通り「日銀」だ。約1000兆円ある国債のうち600兆円弱を日銀が保有している。それ以外では、年金基金や生命保険などの機関投資家と残りはメガバンクや地銀などの銀行が保有している。外国人や個人の保有は僅かにすぎない。

もし例えばヘッジファンドなどの外国人投資家が日本国債を売ろうとする場合、株の空売りと同じように国債を借りてきて売るか、または証券取引所に上場されている国債先物取引でショートすることになる。

一方で大口の貸手は、必然的に大半の国債を保有している日本の生保や年金などになる。実は貸し手に”日銀”の場合がなる場合もある。日銀は、債券市場で決済不能による事故(フェール)を防ぐなどのために市場で不足する国債を証券会社などの要望に沿って売却している(流動性供給オペ)。

先物でショートした場合でも、売り方は3か月毎に訪れる決済日に買い手に現物の国債を引き渡すか、さもなければ買い戻す必要がある。受け渡しに適した国債は供給が限られていて、実際大量に手に入れるのは不可能に近い。後に待っているのは、お馴染みのショートスクイーズだ。

また空売りした場合には、品貸料がかかってくる。通常はレポで調達することになるが、日本円の長短金利が、長期金利が短期金利より高い”順イールド”の場合、金利差分だけ空売りコストがかかってくる。ちょうどFX取引でドルを売ると”スワップポイントの払い”が生じるに似ている。

以上のように”外国人投資家”や”ヘッジファンド”などが日本国債を大量に空売りするのは、メディアやSNSに登場する”自称専門家”の”国債暴落論者”の予言に反して意外に難しい

日本の投資家は金利のある国債を買いたい

一方で、1%と金利の付き始めた日本国債は、多くの機関投資家にとって魅力的だ。利回りが5%近くある米国債の方が魅力的ではないかと思う人もいるかもしれないが、通常外国の国債に投資する場合には、投資元本である外貨を借り入れで調達する。例えば日本の機関投資家が米国債を購入する場合には、米銀からドルを借り入れて米国債を購入する。こうすれば、為替リスクを利息部分に限定できるからだ。この視点から米債投資を眺めると違う風景が見えてくる。ドルは短期金利が長期金利を上回っている逆イールド状態になっているため、ドル資金を借りて国債で運用すると逆ザヤになってしまう。

もちろん円をドルに替えて米国債を買うこともできるが、この場合には巨大な為替リスクを抱えることになる。生保や年金などの長期で運用しているところは別として、銀行などの金融機関が円をドルに替えて(ドル転)運用するのは極めてリスキーだ。それなら1%のリターンを確実に稼げる”円建ての日本国債”に投資するだろう。何しろ今までは、金利が0.1%の日銀当座預金に”豚積み”していたのだ。金利収入だけで10倍だ。

政府の借金は急激に減っている

もう一つ見逃せないポイントがある。それは”日本政府の借金が急激に減っている”ことだ。いつもマスコミ(そして財務省)から”日本の政府は借金まみれです!”と聞かされている一般国民には驚きかもしれないが、2022年から3年続いている”インフレ”と”低金利”の組み合わせで、”日本政府の借金は実質10%減少”している。あと数年この状態を保てれば、数百兆円の”政府の借金が帳消し”になり、実質的に日本政府の財政再建が完了しそうな勢いだ。
素朴な疑問として財政再建が完了した日本政府が発行する国債が暴落するだろうか?

民間も借金が減って経済回復

同じようなことは、民間企業にも言える。日本企業は過去20年以上リストラと借金返済に邁進してきた。バランスシート調整といわれるものだ。しかし、今後2~3%程度の物価上昇が続くと実質的な債務負担が急激に減少していく。
特に興味深いのが、例えばだが千葉ニュータウンと都心を結ぶ”北総鉄道”のような企業だ。バブル期の過剰借り入れが祟って、借入金返済のため運賃を高くせざるを得ず、過去20年近く日本一運賃が高い鉄道として低迷を続けてきた。
しかし今後インフレで実質債務が減少するとともに、インフレで運賃の割高感が解消されると、失われた競争力を回復するかもしれない。また成田空港直結という地の利を生かして、新たな投資に打って出る余裕も生まれてくるだろう。

ヤバいのは米国政府?

円安の陰に隠れてあまり注目されていないが、日本国債以上にヤバイのが米国かもしれない。米国では、2021年に就任したバイデン大統領が、”インフレ対策法”という名のバラマキ政策を実行、コロナで膨らんだ政府支出がさらに拡大している。また利上げの影響もあり、利払いが急激に膨らんで、防衛費を上回る寸前まできている。
米国政府の借金の額は、2023年末時点で34兆ドル(約5270兆円)だ。利払いは1兆ドル(155兆円)を超えている。債務残高の対GDP比もコロナ前の60%台からほぼ100%まで上昇している。
まさに日本でよく話題になる自電車操業状態に陥りかけているようにさえも見える。もし市場で予想されているインフレ率の低下と利下げが行われず高金利が継続すると、利払いが今後も急増しかねない。
また今年秋に予定されている米大統領選でトランプ大統領が誕生すると、当然のように減税を行うことになるだろう。また公約通り中国に対して高い関税をかけるとインフレ率が再び上昇しかねない。そうなれば米政府の利払いが急増して、まさに自転車操業状態に陥りかねない。そうなると米金利が上昇して、1970年代後半のドル危機を髣髴とする事態に陥りかねない。

日本の未来は意外に明るい

以上のように俯瞰して眺めると、日本の未来は意外に明るいかもしれない。政府債務が急減していることから数年後には、財政が柔軟性を取り戻せるだろう。インフレでこれまで政府の重荷になっていた老人向けの社会福祉費を実質的に削減できる。また将来に向けたインフラ投資や研究開発投資なども可能になるだろう。

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