株価が好調だ。日経平均はバブル後高値を抜けてあっと言う間に3万1000円台に乗った。海外でもNVIDIAをはじめとした半導体関連がバブルの様相を呈している。
世間では、この急激な株価の上昇を受けて驚きと戸惑いが広がるとともに、バブル的な急激な上昇に懸念を表明する人も多いようだ。
今回はそんな世間の空気も読まずに、調子に乗って「日経平均五万円説」を唱えてみた。
株価は名目である
今回の株価の急騰の要因の一つと言われているのが「しつこいインフレ」だ。新型コロナ対策で大量の資金がばら撒かれたことを受けて各国でインフレが昂進している。加えて昨年勃発したウクライナ戦争を受けてエネルギーと食料価格も急騰し、インフレに油を注いでいる。
20年以上の長期に渡ってデフレ状態が続いた我が日本でも、とうとう”待望の?”インフレが始まったようだ。消費者物価(CPI)ベースで4%弱、より庶民の体感に近い生鮮食料や電気代などは20%近く上昇している。
こので再確認したいのは、「株価は名目」ということだ。物価の上昇が定着すると企業も何れは値上げせざるを得ない。「物や価値の集合体」である企業自体の「見た目の値段」も当然上昇する。生産するモノの数量などの企業の実態が何も変化していなくても、値上げで見た目の売上高や利益も増えるのだ。
当然のことながら「株価も上昇」する。
株にはレバレッジが掛かっている
次に確認したい重要なことは、株には「レバレッジ」が掛かっているということだ。
小難しい財務諸表を持ち出すもないが、多くの企業は「借金」している。ビジネスを拡大するために金を借りている。同じ規模のビジネスでも、自己資金だけで運営されている企業(無借金企業)と借り入れをしている企業では、利子を払った後の株主のものになる利益の額が違う(はず)。
もし売り上げも利益も資産も全く瓜二つの企業が二つあったとして、企業Aが無借金で企業Bが自己資本と同額の借金をしている場合(財務レバレッジが二倍)を想定する。利払いと税金を考慮しないと仮定すると、理論株価は企業Bが企業Aの倍になる(はず)だ。
実際には借金すると利払いが発生するので、上述の通りにはならないが、もし企業の利益率が支払利子を大幅に上回っている限りは、企業の利益の総体である株価は、借金のある方の株価が急激に上昇することになる。もちろん業種によって、この借入比率は異なるが、多くの企業が借金している。平成29年度の日本企業の平均財務レバレッジは2.47だそうだ。
実質マイナス金利
こう考えると、今後の株価を占う上で重要なのが「金利の動き」と言うことになる。現在の日本の金利は「大きくマイナス」になっている。インフレが進行していることと、日本銀行が金融緩和を継続していることから、借金をすると儲かるという異常な状況になっている。
問題はこの「実質マイナス金利」がいつまで続くかだ。4月に就任したばかりの日銀の植田新総裁は、足元でインフレが昂進しているにも拘わらず、当面の間は現在の超々金融緩和を続けると表明している。
この日銀の超々金融緩和がいつまで続くかが、今後の株価を占う鍵になることは言うまでもない。
ドル建で考える
今回の株価の上昇ではインフレ+円安」が主力となって株価が上昇している。企業の値上げによる価格転嫁が進むと、企業の売上や名目的な利益も増加することから、金利が名目成長率を下回っている限り(実質マイナイス金利)である限り株価は上昇する。
もう一つの注目点が、日本の経済構造の変化だ。昭和までの日本はモノ作り大国で輸出で稼いでいた。しかし令和の現在は「貿易収支は赤字」だ。iPhoneをはじめとする多くの製品が輸入されている。この場合、海外のインフレがダイレクトに日本国内に影響することになる。最近iPhoneが20万円近くになり、庶民の手が届かなくなってきているのがその象徴だ。
このような日本経済の構造変化を考えると、そもそも株価も「ドル建て」で考えた方がいいかもしれない。因みに日経平均はドル建てでは直近高値をまだ抜いていない。
日経平均5万円説
上述の様な要因を前提に、以下のような前提条件で今後の理論株価を占ってみたいと思う。
- インフレは収まらず3%台が続く
- 財務レバレッジは2倍を想定
- 日銀は金利を上げない、微調整はあっても実質マイナス金利が今後も続く
- 為替は円安に進む(一ドル150円想定)
インフレによる名目物価の上昇
インフレによる将来の名目価値の概算としては、ネイピア数を利率で累乗するとザックリした数がでる。計算期間は20年も考えればいいだろう。もし物価上昇を5%で金利がゼロと仮定すると、高校で習った自然対数の”e”そのものになる。2.71828だ。つまり約2.5倍から3倍になる程度と考えていいだろう。
実際には金利の支払いが発生する。支払金利も考慮して年率の物価上昇を3%程度と想定すると、結果は1.8倍程度になる。
他の要因(生産量や労働者数、生産性など)を全く考慮しなくても、インフレが昂進するだけで、株価の前提条件となるモノノ価格は長期的に2倍〜3倍程度になる可能性がある。
財務レバレッジと円安
ここに更に財務レバレッジと円安を加えてみる。財務レバレッジを2倍程度として、為替が一ドル150円程度を想定してみる。財務レバレッジで2倍×為替で+10%とすると2.2倍になる。
理論株価は、インフレで2倍〜3倍、更に財務レバレッジと為替で2.2倍と考えると、結果は4.4倍〜6.6倍となる。
理論株価5万円
アベノミクスが続いた過去10年程の間、日本経済は名目実質とも殆ど成長していなかった。為替市場も平均を取れば、ほぼ横ばいだ。と言うことで日経平均の出発点をアベノミクス開始当時の1万円程度とすると、日経平均の理論値は4.4万円〜6.6万円となる。間を取って5万円台だ。あながちあり得ない数字ではない。
ちなみに日経平均の出発点を2万6000円とすると、4.4倍なら何と11万4400円、6.6倍なら17万1600円になってします。さすがにこれはあり得ないだろう。あるとすれば円の暴落やハイパーインフレが起きているような状況だろう。
理想とは程遠い株価上昇
本来なら生産性の上昇や、新技術の開発などで経済が成長し、株価が上昇するのが理想だ。だが同時に円安とインフレだけでも株価は上昇する(こともある)。以上の非常にザックリした計算でも日経平均株価5万円もあり得ない話ではない。
ただ仮に株価が5万円になったとしても、一般庶民の生活が良くなるかは別の話だ。円安と物価上昇で生活が更に苦しくなる可能性の方が高い。実際に大企業を中心に賃金が上がったにも拘わらず、足元ではインフレの影響で実質賃金は大幅に低下している。
今回の株高が一巡する頃には、日本も諸外国と同じように超格差社会に突入するのかもしれない。
最後に、あくまで投資は自己責任で。

コメント