先頃2022年度における日本の出生数が発表された。結果は既に報道されていた通り初の80万人割れとなった。この結果を受けてか知らないが、最近やたらと”少子化対策”が話題になっている。岸田総理も先頃、”異次元の少子化対策”の6月までの取りまとめを表明したばかりだ。
しかし敢えてここでは”少子化対策”は無意味かつ無駄であると言いたい。
既に時遅し
少子化対策の議論を聞いていて強烈な違和感をいつも感じる。それは少子化対策をすれば、何か効果があることを前提にしていることだ。
しかし多くの識者が表明している通り、”既に時遅し”なのだ。
日本では、子供を産むことの出来る若い女性の数が既にピークアウトしている。そして、これからも減り続ける。これはちょっと計算してみれば簡単に分かる。
20年前の2000年の成人数は164万人だった。 2022年の成人数は、120万人 に減少している。その差は約40万人だ。そして2022年の出生数80万人割れだ(2042年の成人)。20年で丁度40万人づつ減少している。
一方で子供を産むことの出来る年齢は、高校卒業後の18歳から38歳までぐらいだ。アラフォーで妊活に取り組んでいる人には気の毒だが、女性は38歳を過ぎると妊娠可能性が急激に下がるそうだ。そうなると、妊娠出産結婚のプロセスを安全確実に行える期間は、20年程度しかない。意外に短い。
そして女性は人口の半分しかいない。そう考えると、今後20年間の男女合わせた若い人口は年間平均で100万人程度と推定するのは妥当だろう。女性の数は半分の50万人しかいない。
この50万人が全員2人の子供を産んだとして、年間の出生数は100万人程度にしかならない。20年間だと2000万人だ。
一方で日本では、今後20年間で平均して毎年150万人程度の人が亡くなる。20年間で3000万人だ。
差し引きで年間で50万人、20年間で1000万人人口が減ることになる。
以上は、全ての女性が2人以上の子供を産んだ場合だ。実際の合計特殊出生率は1.3程度だ。この数字を元に計算すると、今後20年間で、1年間に生まれてくる子供の数は、年間65万人になる。
死者数との差は、年間100万人程度になる。20年間で2000万人の人口が減ることになる。
日本の人口は、2050年代にはほぼ確実に1億人を割り込む。
出生率を2以上にするのは無理
もし少子化対策をして、”人口減少を止めよう”とするなら、年間で150万人以上の出生数が必要になる。子供を受ける女性の数を関すると、必要な合計特殊出生率は”3”以上になる。一人の女性が平均して3人産む必要がある。
実際には女性の1割程度が子供が出来ない(または作らない)。これは少子化になる前の時代からだ。そう考えると、実際には、”全ての出産可能な若い女性に、4人程度の子供を産んでもらう”必要がある。現実問題としては不可能だろう。
先進国で出生率を2以上に出来た国はない
日本では、少子化の原因を”経済的な負担の大きさ”とする意見が多い。しかし他の先進国を見てみても、継続的に合計特殊出生率を2以上に保てた国は、ほぼない。
アメリカは出生率を2以上に保っているが、これは移民1世が多産だからだ。移民も2世以降になり、アメリカ生まれが主流になると、出生率は1.6程度に下がる。
欧州ではフランスが少子化対策で有名だが、そのフランスでさえ、2以上になっていた出生率が、2010年以降に1.8台に低下している。これは、そもそも高出生率の原因が外国人カップル(要は中東からの移民)の出生率が高かったからだそうだ。移民カップルが2世世代になると出生数は急減している。高福祉で有名なスウェーデンでも1.8台で、ノルウェーやフィンランドでは、出生率が日本に近づいている。何れの国も人口置き換え水準の2には届いていない。
どちらにしても先進国になると人口は減るのだ。
言ってはいけない少子化の本当の理由
誰も批判を恐れて言わないが、”少子化の本当の理由”と考えられる項目がある。それは”女性の高学歴化”だ。実際に過去の出生率の推移を見ると、女性の学歴の向上とともに出生率も下がっていることが分かるだろう。
仮に学校が少子化の直接の原因でないにしても、女性の高学歴化が進むと、結婚する時期が遅れることになる。当然、出産育児の時間も短くなる。これだけでも大きな少子化の要因になるだろう。
実際に女性が学校に行くことを制限されている国(例えばタリバン統治下のアフガニスタン)では、女性は多くの子供を生んでいる(しかし、そのアフガンでも出生率が下がり始めているらしい)。
だからと言って女性に大学に行くなとは言えないだろう。であるならば、結論としては”少子化対策は無意味”と言うことになる。
100年間は変わらない
既に子供を産むことのできる女性の数が減少している。そして女性の高学歴化も止まらない。となれば、女性が一生のうちに生む合計特殊出生率が、人口維持レベルである”2”を安定的に超える可能性は極めて低い。結論としては、今後100年ぐらいは人口が減り続けるだろう。
政府の超長期人口予測もこの見方を裏付けている。日本の人口は40年後には1億人を割り込み、100年後の22世紀には、今の三分の一の4000万人程度に減少する見込みだ。ちょうど幕末明治維新の時の日本の人口と同じくらいだ。
繰り返すが、この人口減少の流れは、どんな対策をしても止められない。
人口減少が止まるとしたら
仮に人口減少が止まるとしたら、どんな理由が考えられるだろうか。一つ目は、子育てに掛かるコストが劇的に下がる場合だ。そして二つ目は、子沢山が社会的なステータスを意味するようになる場合や、収入や老後の安定など経済的な安定を意味するようになる場合だ。
そして子育てのコストには2つの面が考えられる。一つ目は、授乳や保育など主に子供が幼児期に掛かる物理的且つ時間的な手間だ。二つ目は、子供に高学歴を付けさせようとする”教育コスト”による経済的な負担だ。特に一つ目のコストに関しては、女性のキャリアが中断することから、子育てコストが非常に大きくなっている。
現在世界的に見られる少子化トレンドが止まるとしたら、技術的または社会的要因により、女性の出産育児コストが劇的に減少する必要がある。
AIやロボットが進化して働く必要がなくなる
近い将来、最近話題のChatGptの様なAIが更に進化して、殆どの仕事がAIとロボットに任される未来が到来するかもしれない。そうなると無理をして子供に高学歴を付けさせる必要がなくなる。学歴自体が社会的意味を失うのだ。そうなれば、子育てに掛かる教育コストが劇的に減少するだろう。
子育てが自動化される
今の技術ではかなりハードルが高いが、子育てがAIやロボットにより完全自動化される時代が来るかもしれない。授乳やオムツの交換、子供の観察なども全てロボット化される未来だ。この場合には、女性の出産と育児によるキャリア形成の中断を最小限にすることが可能になり、出産が増えるかもしれない。
完全試験管ベイビー
技術が進歩し、受精から出産・誕生まで、生身の女性が妊娠する必要がない”完全試験管ベイビー”が誕生するかもしれない。そうなれば、国家が出生数をコントロールし、人口を完全管理する未来が到来するかもしれない
デザイナーズベイビー
2012年に所謂遺伝子編集の技術が開発された。これ以降、世界中で所謂「デザイナーズベイビー」の可否についての議論が行われている。近い将来、このデザイナーズベイビーの技術が確立されると、見た目や知能、音楽や芸術の才能を”強化”した子供を作ることが可能になるかもしれない。
その場合、特に富裕層を中心に、”強化人間”の子供を大量に持つことが、一種のステータスになる時代が到来するかもしれない。
既に多くの人が複数の”ペット”を飼っている。丁度今のペットの様に、遺伝子が強化された”デザイナーズベイビー”をアクセサリーやブランド物、スーパーカーの様に所有することが流行するかもしれない。子沢山が”成功者の証”になるのだ。
子育ての社会的ステータスが高くなる
技術的な進歩以外に、出産・子育てに関する社会的ステータスが、何らかの理由で劇的に高まれば、出生数の増加に繋がるかもしれない。一番簡単なのが、”子供を産むとお金がもらえる”だろう。子育て以降、老後も含めて、子供を産んだ女性が社会的に極めて優遇される場合などだ。これには、ただ制度を作るだけでなく、確実にメリットがあると多くの女性に確信させるぐらいの政策が必要になる(例えば憲法に明記するなど)。
人口減少は悪いことか
今の様に人口が多くなったのは、実はここ200年程の出来事だ。世界人口は100年前の1900年における世界の人口は、たったの16億人しかいなかった。それが今では、5倍の80億人だ。そして21世紀の後半には100億人に達する見込みだ。
これほど人口が増えれば、それは環境破壊や地球温暖化も起きるだろう。
そして環境保護を訴える人たちは、一番効果的な対策を絶対に口にしない。それは”人口を減らす”ことだ。
人口減少は必ずしも悪いことではない。むしろ人類の生存にとっては”良いこと”かもしれない。そして世界中で観察されている”少子化”とは、生物としての人類が自分たちの人口を地球環境が維持可能な範囲に、自分たちで調節しようとしていることの表れかもしれない。そうであるならば、”異次元の少子化対策”をしてまで、無理をして人口を増やす必要はないだろう。
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