皆様あけましておめでとうございます。
昨年2022年は、FRBの利上げが続き、株価が久しぶりに急落するなど、投資家にとっては難しい年でした。今年2023年は、再び明るい年になると良いですね。
ところで、新年にYouTubeでアメリカNBCの「Meet The Press」という有名報道番組を見ていたところ、SNSなどのテック企業にとって、気になる話題を取り上げていたのでシェアーしたいと思います。
通信品位法230条
話題になって居たのは、アメリカの通信品位法と言う法律の第230条です。この法律は、1996年に制定された法律で、インターネット・サービスプロバイダーの免責条項を定めています。
この法律がSNSなどのテック企業にとって重要な点をザックリいうと、「投稿された内容にSNS企業は責任がない」という点と、「投稿を削除しても責任は問われない」という点になります。
新聞やテレビ、雑誌や本などの報道機関・メディアの場合には、その内容に関して制作者や著者が責任を問われます。通常は公益性がある場合には、「報道の自由」が認められ、責任を問われることはありません。しかし、虚偽の内容を報道したり、プライバシーの侵害をしたりして、一般人の名誉を侵害たりした場合には、(刑事、民事)の責任を問われることになります。日本だと文春砲で有名な週刊文春が典型例で、よく訴えられています。
ところがFacebookやGoogleのYouTube、Twitterなどの所謂「プラットフォーマー」は、この通信品位法230条で、ユーザーが投稿した内容に責任を問われないという「特権的な地位」を確保しました。
この通信品位法230条により、投稿内容にプラットフォーマーが責任を負わなくて済むようになったことが、現在のITテック企業の興隆を支えた一つの柱と言っても過言ではないでしょう。
法律改正の動き
ところが、現在、このIT企業を法的な面から支えている「米通信品位法230条」の改正が、アメリカで議題に挙がっているようです。
トランプのtweet
きっかけになったのは、トランプ大統領のtweetに対する、Twitter社の制限です。2020年の米大統領選では、郵便投票が信用できないとトランプ大統領が、度々「虚偽」のtweetをしました。このフェイクtweetに対して、Twitter社は「事実を確認するように」という「注意書き」をトランプ大統領のtweetに表示しました。
この「注意書きの表示」に対して、トランプ大統領陣営は、政治的な意図のある「検閲だ」とクレームを付け、IT企業による検閲を禁止する大統領令に署名したり、IT企業による検閲に対して「免責」を付与している、通信品位法第230条の解釈の変更を試みるなどしました。
同じ時期に、バイデン大統領の息子に対する、ウクライナのガス企業との汚職に関するNYタイムズの記事へのリンクが、Twitterの記事から削除されたことから、Twitter社内に強硬なリベラルの反トランプ派が潜んでいるのではと当時から話題になっていました。
米議事堂占拠事件とトランプアカウント停止
2020年の大統領選挙では、トランプ大統領が敗北して、現在のバイデン大統領が選出されました。そして2021年1月6日には、前代未聞の「トランプ支持者による議事堂占拠事件」が発生しました。この議事堂事件では、暴徒の動員にTwitterなどのSNSが盛んに利用されただけでなく、トランプ大統領のtweetが暴走の切っ掛けになったのではないかと言われています。そして、この議事堂占拠事件を受けて、とうとうTwitter社は、トランプ大統領のアカウントを停止しました。しかし、この措置に関しても、政治的な偏向に基づく「検閲」だとの意見が強くあります。
イーロン・マスクのTwitter買収
この論争に更に火を注いだのが、電気自動車で有名なテスラのオーナーであるイーロン・マスクによるTwitterの買収です。Twitterを買収するとマスクは、早速、ロックされたトランプのアカウントを復活させました。また投稿の検閲を担っていたと言われる社員の大量解雇に踏み切りました。
このイーロン・マスクの措置に関しては、保守派とリベラル双方から様々な批判が噴出しているようです。
元は30年前の旧い法律
元々プラットフォーマーの「免責」を定めた米通信品位法230条が制定されたのは、インターネット黎明期の1996年です。そして、この時に課題となっていたのは、今は懐かしいAOLやコンピューサーブといったISP(インターネットサービスプロバイダー)の責任でした。ホームページ時代の話です。そして、特に問題になったのは、日本で言うと「伝説の2ちゃんねる」のような掲示板でした。
しかし21世紀に入り、双方向に投稿が可能なSNSが登場し、更にスマートフォンが普及したことから、SNSのユーザーが爆発的に拡大しました。そして、2016年のトランプ大統領の登場で、SNSに対する逆風が一気に強まりました。
アルゴリズムは「編集」ではないか
今まで法的な免責を盾に「やりたい放題」だったSNS企業ですが、ここに来て新たな逆風が吹き始めているようです。今までは、プラットフォーマーによる「検閲」が問題になることが多かったのですが、今回は「アルゴリズムによる表示の最適化」が問題になり始めているようです。
今までSNSなどのプラットフォーマーが、投稿内容に関して「免責」されてきたのは、第三者であるユーザーが「勝手に」投稿した内容を、ただ表示しているに過ぎない、というのがザックリした理由でした。要は、SNS企業は、「情報の土管(パイプ)」にすぎないのであり、土管の中を流れている排泄物(情報)にまで責任は負えないということでしょうか。
しかし、FacebookやYouTube、Twitterなどの主要なSNSでは、ユーザーごとに表示内容の「最適化」が行われています。ユーザーのクリックや視聴履歴だけでなく、スクロールの動きや、特定の画面での滞留時間なども計測して、ユーザー毎に表示内容を変更しているのです。
SNS企業としては、視聴時間を最大化して、広告による収益を最大化するために、こうした「最適化」を行っているわけですが、この「最適化」が「編集」に当たるのではないかと言うのです。
「編集」と認定されると巨額賠償?
もしSNS企業のアルゴリズムによる「最適化」が「編集」と法的に認定された場合には、何が起きるでしょうか。
それは「巨額の賠償訴訟」の可能性でしょう。
名誉棄損やプライバシー侵害を理由に、巨額の賠償金を命じる判決が連発され、当然のことながら「クラスアクション」と呼ばれる集団訴訟が行われることになるでしょう。
タバコ企業の二の舞か
以前、巨額の賠償を命じられた「タバコ企業」と同じような事態に、FacebookやGoogle、Twitterが直面することになるかもしれません。タバコ企業に関しては、長年キャメルを吸い続けてい癌になった女性が、タバコを吸うと癌になるとうことを知らされていなかったという理由で、タバコ企業に巨額の賠償が命じられました。そして、その後の集団訴訟でも巨額の賠償金を命じる判決が相次ぎました。またアメリカの各州の保険当局からタバコが原因の病気の治療費の補填を要求され、最終的に何兆円もの巨額の賠償金が支払われました。また訴訟の中で、タバコ企業が以前からタバコの発ガン性を認識していながら、巨額の資金を投入して、この危険性を隠蔽していた事実が次々に暴露されもしました。
株価の暴落も
FacebookやTwitterなどの巨大テック企業に関しても、数年前から内部暴露が相次いでいます。SNS企業が、SNSのティーンエイジャーへの悪影響を知りながら、逆に広告に利用していたことや、個人情報が、営利目的に無造作に扱われていたこと、社内で政治的偏向に元に、実質的な「検閲」が行われていたなどの事実が次々に暴露されています。
もし、以前のタバコ企業と同じようなことが、巨大テック企業に起きれば、株価は当然に暴落することでしょう。
独占企業解体がアメリカの伝統
日本の常識で普通に考えたら、「最強のアメリカIT産業」を支えている巨大SNS企業を自ら潰すようなことは、しないように思えます。日本に無理やり例えると、日本の黒字を一人で稼いでいるトヨタ自動車を潰すようなものです。しかしアメリカの歴史を振り返ると、「巨大独占企業は解体する」というのが、アメリカの伝統でもあります。
1910年代には、当時世界最大を誇っていた「ロックフェラーのスタンダード石油」が、反トラスト法の適用で分社化されています。また1930年代の大恐慌時代には、アメリカの金融機関がやり玉にあがり、グラス・スティーガル法が制定され、投資銀行と商業銀行が分離されました。さらに1980年代には、当時通信業界を独占していた「AT&T」も分割されています。
また、IT企業に関しても例外ではなく、1990年代には、当時盛隆を誇っていた「マイクロソフト」のWindowsとブラウザーのエクスプローラーについて分割案も俎上にあがっていました。
まとめ・・・大統領選を前に規制の可能性
以上のようにSNSに対する新たな規制がアメリカで導入されるかもしれません。もちろん巨大IT企業側もワシントンの政治家に対して大量の資金を投入して、ロビー活動やキャンペーンを行っており、先行きは不透明です。
しかしながら、バイデン大統領もある程度の規制に賛成しているようですので、2024年の大統領選を前に、今年(2023年)中に何らかの規制案が俎上に上る可能性があると思われます。
ナスダックやレバナスなどのGAFAを中心としたハイテク株に投資している投資家は注意が必要かもしれません。
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