セミリタイアやFIREの話の中で「生きにくさ」というワードをよく見かける。普通に生活していても「何か息苦しさを感じる」ということのようだ。多くの日本人が、東京のような清潔で安全なスーパー・メトロポリスで、歴史上まれにみる豊かな生活を送っているのに、何故このような生きにくさを感じるのだろう。
原始人は意外に豊か
以前読んだ本に面白いことが書かれていた。アフリカの砂漠地帯で原始的な生活を送る人たちのことだ。日本では「ブッシュマン」という名前で有名な人たちだ。正式には「コイサンマン」とも呼ぶらしい。
彼らは、半裸の格好で狩猟採集生活を送っている。狩りをして獲物を手に入れたり、イモや植物の根っこを採集して生きている。シロアリなどの昆虫もよく食べているらしい。
このコイサンマンの生活を南アフリカの白人学者が、共同生活を送りながら調査した。当初は一日中食べ物を探していると思われていた彼らだが、実際には一日に4時間程度しか働いていなかったそうだ。そしてたった4時間の労働で十分な食料を手に入れていた。後の時間は、おしゃべりをしたり、子供と遊んだりして過ごしていたそうだ。
まるでセミリタイアかFIRE民そっくりだ。
この調査結果は衝撃をもって迎えられた。1日8時間どころか、たった4時間で十分に暮らせていけるのだ。では、なぜ私たち現代人は、こうも忙しく働いているのだろう。
すべての元凶は農業
よく定年退職したサラリーマンなどが、田舎に土地を手に入れて農業にチャレンジする(そして大体失敗する)。晴耕雨読の生活というやつだ。この前提として「農業こそ人間の生きる道」という考えがあるのだろう。土地とともに生きることこそ「人の本来の道」で、東京などの都市で生活するのは邪道だというような考えだ。
しかし近年になって、この農業原理教の様な考え方に多数の異論が唱えられている。イスラエルの人類学者であるハラリ氏のベストセラー「サピエンス」が代表例だが、一言で言えば「人類の不幸の元凶は農業」というものだ。
国家の誕生と格差の発生
移動生活が中心の狩猟採集生活では、個人の財産は「持ち運べるもの」に限られる。食料は動物の肉や昆虫、植物の根っこなどが中心だ。保存も効かないし、何しろ何時でも手に入るのだから、今食べる以外に余剰食糧を持つ必要もない。
しかし約一万年前に農業が始まると「余剰生産」が生まれることになる。この余剰穀物は、それまでの食料と違って保存が可能だった。そして、この余剰を巡って争いが発生する。そして最終的には、武力のある少数の人間が他の人間を支配する構造が生まれた。
人口の急増
人口も急増した。定住するようになると乳児死亡率が低下し、労働力確保の観点から出産が奨励された。また穀物が主体の糖質の高い主食は、特に女性の成熟年聯を低下させ、より多くの人間が生まれることになったそうだ。
そして人口が増えると更なる食料が必要になる。継続的に農地を広げる必要が出てくる。そして農地拡大による食糧生産の増加は、人口の更なる増加をもたらす。最終的にマルサスで有名な人口増加と飢餓の蟻地獄に嵌まってくことになる。食料生産が増加しても「サッパリ豊かにならない」のだ。
農業による大規模環境破壊
より多くの人間が生活するようになると「環境を破壊」する。人間の出す排出物に加えて、エネルギーを確保するために大量の木材が必要になり、「大規模な森林破壊」が発生しただろう。また農地を広げたり灌漑をするためにも当然のことながら「大規模な土木工事」が必要になり、自然を破壊しまくることに。近代に入るとのことながら「農薬」や「化学肥料」を多用することで、生態系が大規模に破壊されることにもなる。
よく田舎の田圃のある景色を「里山は日本の原風景」などと賛美することがあるが、実は農村の風景というは、大規模土木工事による「人工的な景色」で、決して自然のままではない。
伝染病の蔓延
また狭い地域に多くの人や家畜が密集するようになって、家畜由来の「伝染病」が蔓延するようになった。
いま世界的なパンデミックを引き起こしている「新型コロナウィルス」もコウモリ由来だと言われている。それ以外でも、天然痘は牛、ジフテリアは犬、インフルエンザは鶏や豚など、人類が苦しんでいる伝染病の殆どが「家畜」や動物由来だ。もし人間が、都市部でこれほど密集していなければ、病気が広範囲に広がる事もなかっただろう。
健康面で言うと最近話題の「糖質制限」なども農業と関係している。糖質制限をした人の間で、虫歯が無くなったという話をよく聞く。人間の歯は生え変わらない。これは、従来はタンパク質や脂質が主食で、人間が虫歯になることが稀だった証拠かもしれないそうだ。ところが糖質をたっぷり含んだ穀物が主食になるに従って、人間に虫歯が蔓延するようなったというのだ。
私たちは全員「家畜」なのだ
約一万年前に人間が農業を始めた瞬間から、私たちの”奴隷化”が始まった。そして私たち自身が、その環境に適応していった。ちょうど、元々は”自由な野生動物”だった狼が、人に飼われる大人しい”犬”になったように、私たちも、”自由で元気な原始人”から”飼いならされた「家畜」”に変貌していったのだ。
ネットが人類を隷属から開放する
以上のように約一万年前に始まった「農業」は、我々人類を「貧困と争いの連鎖」に誘い込んだ。そして蔓延する病気や格差、貧困や飢餓、そして奴隷のようなブラック労働には嵌り込むことになった。
しかし21世紀に入り人類に大きな変化が訪れた。ネットが利用可能になったのだ。
このネット、スマホを駆使すれば農業=国家の奴隷から解放され、自由な原始人に戻ることが可能になる。
土地の呪縛からの解放
以前であれば人間には二つの選択肢しかなかった。農業を営むか、農業を離脱して遊牧民や山で暮らすかだ。実際に日本には、つい最近まで山で暮らす人たちが存在したらしい。しかし普通は、安定的に食料が手に入る農業を選んだだろう。この場合は、奴隷労働を強いられることになる。後は、一か八か支配者階級になるために暴力に訴えるかだ。
しかし「インターネット」という魔法の技術が、人類を奴隷労働から解放した。
農業が主体だった時代なら、人は生まれ育った土地から離れることができなかった。土地を持たないことは、即ち「死」を意味した。近代になり工業が発達しても、この構造は基本的に変化しなかった。工場や会社という新たに登場した「村」から離れることは、即「社会的な死」を意味した。
しかしインターネットが登場したことで、この「土地の呪縛」から人間は解放されることか可能になった。ネットを利用した仕事なら土地に縛られることはない。問題が起これば「移動すればいいだけ」だ。
スターリンクが国境を壊す
今でも旅行先の空港で現地のSIMカードさえ手に入れれば、世界中でインターネットに接続可能だ。更にイーロン・マスクで有名なスペースX社が、スターリンクという衛星インターネットサービスを開始している。このスターリンクを使えば、理論上は国家の統制から逃れてネットを利用することが出来る。もしかしたら最終的に、この衛星インターネットシステムが、国境を壊す役目を担うことになるかもしれない。
シェアリングサービスで住まいからも解放
以前であれば、「家を買う」ことが人生の目的と思われていた。しかし今はAirbnbをはじめとするシェアリングサービスを利用すれば、世界中で寝る場所を確保できる。移動はUberやLiftを使えばいい。高馬鹿高い維持費のかかる自動車も不要だ。
スマホで知らいない土地でも迷わない
以外に地味なことだが、ここ10年で一番影響のあったことの一つが、スマホでGoogleマップなどの地図を使えるようになったことだ。少し前までは“地球の歩き方”や”ロンリープラネット”のようだ分厚いガイドブックを持ってく以外に”自分の場所を知る手段がない”状態だった。それが今では、自分のいる場所が地球上どこでもすぐに分かる。
また、ホテルの予約や航空券の予約も、スマホのアプリ上で可能になってきている。つい最近までは、英語を使って自分で予約するか、現地の旅行代理店を使う以外に宿を確保する方法が無かった。
自由になるには経済的自立が必要
せっかくスマホとインターネットという魔法の技術が私達人類を解放しようとしているのに、もう一つの障害が私たちの前に立ちはだかっている。それが国家や会社などの既存の社会組織だ。この国家や会社は、私達を何とかして土地や組織に縛り付けて搾取しようとする。
技術が進歩した現代では、既存の国家や会社の様な組織に属する必然性は、必ずしもない。しかし、既存の国家や社会で既得権益を持っている支配者たちは、支配を維持するために、私たちのような奴隷の存在が必要だ。そして、その際の支配の手段としての罠が、私たちの社会にはビルトインされている。例えば、マイホームやマイカーなどだ。更に毎日のように多量の広告に晒され、必要のないものを消費し続けている。そして住宅ローンやクレジットカードなどの借金、そして毎月貰う給料というお金の罠だ。
この罠による支配構造から抜け出すには、”経済的自立”が必要だ。FIREのFI(Financial Independence)の部分だ。ネットを使い分散した資産を持てば、会社や国家などの既存の社会組織に縛られる必要性は限りなく薄くなる。
FIREで自由なヴァーチャル原始人になろう
世の中には、FIREをただの一時的流行や、嫌な仕事から逃れたいだけの一種の逃避願望と捉えている人も未だ多いだろう。しかし見てきたようにFIREとは、一万年前の農業開始以来続いてきた”人類の隷属化”からの解放運動なのだ。経済的自立を達成し、土地や既存の組織の呪縛から解放されることで、より本来の人間に近い生き方を実践する運動なのだ。
皆さんもFIREして自由なヴァーチャル原始人になりませんか。
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