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高齢化社会の大誤解・・・集団自決が必要なのは「ひろゆき世代」かもしれない

2023年年明け早々、「集団自決」という物騒なワードがTwitterのトピックにあがっていた。この集団自決という過激な発言をしたのは最近メディアで人気のエール大学助教授の成田悠輔氏で、SNS上でプチ炎上していた。。年明けにAbemaTVで放送された番組の中で、成田助教授が「日本経済を復活させるためには高齢者の集団自決が必要」云々の発言をしたためだ。一部では、成田助教授の学歴詐称疑惑やエール大学に抗議して「キャンセル」しようとすする動きまで出ていた。ちなみに成田助教授自身は、過去にも同様の発言を繰り返しており、特に新鮮味はない。

高齢化に関する大きな誤解

今回の「集団自決」発言は、停滞する日本社会を変えるために、「例えば50歳以上の高齢者は、現役から潔く引退すべき…云々」という文脈の中で語られた言葉で、実際に老人が集団自決しろと言っているわけではない。だが、この発言が飛び出した番組の議論を見ていて「とても大きな違和感」を感じた。といっても「集団自決」という部分ではない。それは少子高齢化に関する部分だ。

今の高齢者は老後の準備が出来ている

その違和感とは、高齢化の影響に関するものだ。少子高齢化は、既に社会で大きな話題になって久しい。メディアやネットでは連日の様に「年金が破綻する」とか「財政が破綻する」と言う話がされている。

この話だけを聞いていると、あたかも「今の高齢者が破綻する」ように思えてくる。

しかし、これは大きな誤解だ。

手厚い年金

今、70代や80代の高齢者は「十分老後の準備が出来ている」。現役時代は殆どが正社員で月に14万円程度の厚生年金を受給している。また専業主婦の配偶者がいる場合には、5万円程度の国民年金が加算される。併せて20万円程度だ。

厚労省の資料によると、平成元年時点で公的年金受給者は3629万人いるが、そのうち国民年金のみの受給者は、796万人だけだ。残りの2933万人は、厚生年金や共済年金を受給している。割合は8割近い。

また公的年金に関しては、年金運用機関であるGPIFが、200兆円近い余剰運用資産を持っている。この巨額の剰余金は20年程度で消滅する予定だが、今の70代が生きている内は安泰だろう。

多額の退職金や企業年金

また正社員だった比率が高いため、多くが手厚い退職金を受け取っている。大企業や公務員なら企業年金や共済年金などの上乗せ年金もあるだろう。高給の大手商社のOBだったりすると年金だけで月30万円を越える場合が多い。また夫婦そろって公立学校の教師だったりすると共済年金が夫婦でダブルで支給されたりして、年金収入が月に50万円を越えることもザラだ。

ローン完済済みのマイホーム

またマイホームについても、高齢者の8割以上が持家で、既に大半が住宅ローンを完済している。また多くの家庭が数千万円の蓄えを持っている。中には相続しても売れずに負動産になる場合にもあるかもしれないが、少なくとも本人達が生きている内は、ホームレスの心配はない。

完璧な介護保険

介護に関しても、介護士の人手不足など色々問題は多いが、曲りなりに「介護保険制度」が機能している。あと10年や20年程度は制度を維持可能だろう。

老後破綻するのは「ひろゆき」世代

では「老後の何が心配」なのだろうか。それは「ひろゆきに代表されるロスジェネ世代」が高齢者になった時だ。

ロスジェネ世代というと「若者」の印象があるが、1972年に誕生した団塊ジュニア世代は、去年(2022年)に50歳に達している。1976年生まれのひろゆき氏も既に46歳に達しているはずだ。そして、あと10年するとロスジェネ第一世代が60歳代に突入する。

団塊ジュニア(ロスジェネ)世代が、高齢者になると、いよいよ日本の財政や年金、そして介護などの破綻が見えてくる。

高い非正規雇用と年金未納

まず問題のなるのが高い非正規雇用率だ。今の60代以上は、8割近くが正社員だった。そのため年金も上乗せの厚生年金を受給している。また多くが定年まで働き、多額の「退職金」を受取っている。

しかし非正規比率の高いロスジェネ世代の多くが「国民年金」しか貰えない。満額で月に6万円台だ。また多くのロスジェネが年金を未納している。各種の推計があるが、ロスジェネ世代の非正規率は3割から4割程度と推定されている。

高い未婚率

さらに問題なのが高い未婚率だ。今でも国民年金だけで生活している高齢者はいるが、彼らの多くが結婚している。一人の年金が、月6万円台の国民年金だとしても、夫婦合わせれば13万円程度にはなる。これは厚生年金の受給額とほぼ同じだ(と言うか同じになるように制度設計されている)。

ところが「未婚」のロスジェネは、仮に国民年金を満額受給出来たとしても独身のため月6万円程度で暮らす必要がある。更に現在の公的年金制度だと、ロスジェネが年金を受取り始める2030年代後半には、「マクロスライド」が導入されて、国民年金の受給額が、実質的に5万円台に低下する見込みだ。

そうなると多くが「生活保護」に流入することになるだろう。

子供がいないロスジェネ

「未婚率」と直接的に関係するが、一番問題なのが、「ロスジェネに子供がいない」ことだ。あたりまえだが、保守的な日本では、「結婚しないと子供は生まれない」。実際にロスジェネ世代の子供の数を推計すると「ザックリ6割程度」となるようだ。ロスジェネ10人に対して、その子供世代は6人程度しかいない計算になる。

ロスジェネ世代が老人になると日本は破綻する?

少子高齢化問題と言うと「今の70代や80代の高齢者」VS.「今の若者」という図式を描きがちだ。しかし、冷静に事実を見てみると、「問題なのは、ロスジェネが高齢者になった時」だと分かるだろう。その時には、今の高齢者の殆どは鬼籍に入っている。要は関係ないのだ。

メディアでよく語られる「一人の若者で一人の高齢者を支える」と言う話は、ロスジェネが高齢者になった時の話だ。そういう意味で、多くがロスジェネに属する、ひろゆき氏に代表されるネットの論客が、高齢者を非難するのは滑稽にも思えてくる。要は、自分で自分を批判しているのだ。

もし、あなたがロスジェネ世代で、ひろゆき氏や成田氏の発言に留飲を下げているとしたら、とんだ勘違いだ。そして、あなたが20代や30代で、今の高齢者が高齢化の問題だと思っているなら、それも大きな会違いだ。

高齢化の問題とは、「ロスジェネの年寄り」VS.「今の20代」の負担の話なのだ。

2030年代後半が山場

色々な定義があるが、ロスジェネ世代を1993年から2004年までの10年程度とする場合が多い。これは、1992年に公示地価がピークを付けてバブル崩壊が本格化し、その後始末が完了したのが、2003年の「りそなショック」に代表される大手金融機関への公的資金投入までと見るからだ。もちろん、その数年後の2008年にリーマンショックが発生して、一時大不況になったが、同じ時期に、団塊世代の定年退職が本格化したことや、2013年に始まったアベノミクスで、雇用情勢は劇的に改善している。

そのロスジェネ世代が、60歳に達し始めるのが2032年前後、65歳に達し始めるのが2037年前後と思われる。あと15年後だ。仮に多くの人が70歳まで働くとすると、2037年と2042年になる。ということは、かなり楽観的に考えたとしても2040年頃には、年金や生活保護などの破綻が現実化してくるだろう。

2030年代の年金大改革

公的年金に関しては、西暦で一桁が4と9の5年毎に将来の年金の計算をし直す「財政検証」が行われる。今度のスケジュールは、2024年、2029年、2034年と続く。

一方で、団塊世代の全員が85歳を超えるのが2034年だ。

日本政府と自民党は、桁違いに人数の多い「団塊世代」への年金給付を最優先するだろう。そうなると団塊世代の半分が鬼籍に入り、高齢化により投票率が落ちる2034年の財政検証の際に「社会保障の大改革」が行われるかもしれない。具体的には以下のようは政策が想定される。

税による最低補償年金

ロスジェネ世代の多くが「生活保護」となることが想定されることから、今の「国民年金」を廃止して、「税金による最低補償年金制度」が創設されるかもしれない。問題は金額だ。仮に3500万人に一人月10万円配るとすると、現在の貨幣価値で42兆円必要になる。ちょうど消費税20%分ぐらいだ。不可能な金額ではない。

厚生年金は廃止?

税による最低補償年金制度を創設する際にネックになるのが、「厚生年金の扱い」だ。元々日本の年金は、現役世代が老人を支える「賦課方式」だ。今のところ200兆円あるGPIFの余剰資金も、20年すれば枯渇するだろう。だが、年金の受給権は「財産権」として保護されているため、「国が年金の約束を反故にする」ことは、少なくとも今の憲法下では困難だ。

一つの解決策として、償還期限のない「永久国債」で未払の厚生年金を清算するという案も、学者など一部で提言がされているようだ。この永久国債は、満期がない代わりに、一定の利子が永久に支払われるというものだ。19世紀にイギリスで発行されたコルソン債が有名だ。このコルソン債の有利な点は、インフレが起きると価値が減る事だ。国にとっては、インフレで債務を帳消しに出来る。ただ仮に永久債で対処するにしても、かなり高い利率か、f相続税を非課税」にするなどの何らなかの飴が必要になるだろう。

ホームドクター制度

医療保険の改革も必要になるだろう。想定されるのが「ホームドクター制度」の導入だ。現代の日本では、患者が好きな医療機関を選べる。これを「フリーアクセス」と言ったりする。日本人には当たり前の、このフリーアクセスだが、世界でこの制度を取っている国は殆どない

まともな公的医療保険のある国では、国が国民に対して「掛かり付け医」を指定する。国の保険を使う全ての患者は、最初に掛かり付け医(ホームドクター)の診察を受けることになる。そして、更に専門的な治療や検査、手術が必要な場合にだけ大病院に行ける。これが世界標準だ。

日本で、「ホームドクター制度」を導入するだけで、「医療費が3割減少する」との試算もある。実際に新型コロナウィルスが流行した2020年には、高齢者の無駄な診察が減ったのか、多くの健康保険組合が黒字になった。破綻に瀕している日本の医療保険制度を考えると「良いことずくめ」のように思えるが、収入の減ってしまう医師会が猛烈に反対している

歯科治療を保険から外す

医療保険改革でもう一つ想定されるのが、「歯科治療を公的保険から外す」ことだ。実際に多くの国では、歯科治療は全額自己負担が原則となっている。そのため、外国では多くの人が歯科治療専門の民間の医療保険に加入している。

ただ歯科治療に関しては、放置すると認知症などの病気をかえって悪化させるという指摘もあり、むしろ公的医療保険でカバーするほうが効率的だ、との指摘もある。

将来を見越して自己防衛を

占いや予言の類は殆ど当たらないが、唯一精度の高い予想がある。それは「人口動態」だ。中世のペストや大戦争でもない限り、人口動態の予測は正確だ。

そして、その人口動態で予測すると、日本政府の財政や日本経済が破綻に瀕するとすると、それは「ロスジェネが高齢者になる2040年代」ということになる。そして、膨大な高齢者を前に日本政府が出来ることは限られる。

既に未来は見えているのだから、あとは「リスクに備えて着々と準備する」だけだ。

もし若者の負担を減らすために「集団自決」が必要になるとしたら、それは、今の高齢者ではなくて、「ひろゆき氏などのロスジェネ世代」と言うことになる。2042年になったら、ひろゆき氏に代表されるロスジェネは、その言葉通り「集団自決」するのだろうか。見ものだ。

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