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日銀が急に政策変更してビックリしている時に気休めに読む話。

12月20日に開催された日銀の金融政策決定会合で、突然にYYC政策の修正が発表された。市場は不意を突かれた形となり4円以上の円高となった。この唐突な金融政策の変更に戸惑っている人も多いだろう。ということで、今回は日銀の突然の金融政策変更に戸惑っている時に気休めに読む話をしてみたい。

総裁は利上げではないと繰り返す

当日の午後三時から日本橋の日銀本店で、黒田総裁の記者会見が開かれた。内容を一言で言うと「利上げではない」ということに尽きる。あくまでYYC(長短金利操作付き量的・質的金融緩和)の「修正」にすぎないという立場だ。正直、傍で聞いていても苦しい説明だ。

地方債市場で異常事態発生

では、今回の突然の政策変更の理由は何だろう。一言で言うと”市場の圧力に日銀が屈した”ということだろう。

黒田総裁も会見で説明しているが、足元の債券市場では混乱が広がっていた。特に深刻と思われるのが地方債の金利上昇だ。

公募地方債は、東京都や大阪府などが発行する債券だ。毎年国債と同じように大量に発行されている。日本では、国の監督下の地方財政制度や地方交付金制度があるため、外国の様に県や市などの地方自治体が突然デフォルトする事態は想定されていない。要は国債と同じように安全という建付けだ。通常は、10年国債の条件決定後に、国債に準じた条件で発行されている。。

ところが地方債市場で異変が発生した。

まず12月1日に条件決定された10年国債(第368回債)の発行条件は、以下の通り。日銀の指値オペ上限である0.25%で落札されている。

利付国庫債券(10年)(第368回)

募入平均価格99円52銭
(募入平均利回り)(0.250%)
財務省HPより

しかし地方債に関しては以下の条件で決定されている。見ての通り10年国債の発行条件と大幅な乖離が生じている

公募地方債令和4年12月債の発行条件等

●第237回共同発行市場公募地方債
条件決定日12月6日(火)
表面利率0.554%
発行価格100円00銭
応募者利回り0.554%(複利0.554%)
対国債スプレッド
(カーブ比)
29.0bp
発行予定日12月23日(金)
発行額870億円
期間10年
一般社団法人 地方債協会HPより

問題は、10年国債と公募地方債との発行条件の差だ。以下の表を参照してほしいが、4月の時点では、0.299%で発行されている。日銀の指値オペ条件との差は、0.049%だ。しかし12月債に関しては、0.554%と、日技の指値オペ上限0.25%との差が。0.304%に拡大していることが分かる。地方債の発行条件が、ここ半年ほどで急激に上昇(悪化したことがわかる)。

地方債は、日銀の指値オペの買い入れ対象でないことから、市場が要求する利回りに関しては、”地方債の方が市場実勢に近い”ということになる。本来であれば、日銀が実質的に無制限の信用供与を市中銀行に行っているのだから、このような金利上昇は起こらないはずだ。しかしそれが現実には起こっている。

地方債を引き受ける銀行としては、日銀がオペで買い取るという条件が無い場合は、投資家に販売するか自分たちで持ち続けるほかない。足元のインフレ率が3%を超えている状況下で、リスクの高い10年債を長期間持ち切ることを前提に考えると、とても国債に近い条件では、引受けられないということだろう。

これは一種の市場の反乱だ。

令和4年度 公募地方債の発行実績

 発行日発行額表面利
発行価格応募者
利回り
条件決定日対国債スプレッド
(カーブ比)
4月債令和4年4月25日(月)1,180億円0.299%100円00銭0.299%4月7日(木)6.0bp
5月債令和4年5月25日(水)1,030億円0.304%100円00銭0.304%5月12日(木)6.0bp
6月債令和4年6月24日(金)1,140億円0.309%100円00銭0.309%6月7日(火)6.0bp
7月債令和4年7月25日(月)970億円0.364%100円00銭0.364%7月7日(木)12.0bp
8月債令和4年8月25日(木)1,000億円0.315%100円00銭0.315%8月4日(木)12.0bp
9月債令和4年9月22日(木)1,010億円0.369%100円00銭0.369%9月6日(火)13.0bp
10月債令和4年10月25日(火)890億円0.444%100円00銭0.444%10月6日(木)20.0bp
11月債令和4年11月25日(金)860億円0.449%100円00銭0.449%11月8日(火)20.0bp
一般社団法人 地方債協会HPより

市場の圧力に屈した日銀

今回の日銀による突然の政策変更の要点は、金利正常化プロセスの始まりであると同時に、”日銀が市場の圧力に屈した”という点も重要だろう。年明け以降もインフレ率が高止まりし、円相場も円安で推移するようであれば、市場は地方債市場で、更なる高い金利を要求するかもしれない。実際に足元の流通市場では、10年満期の地方債の利回りが、一部で0.6%台の後半まで上昇している。場合によっては、年明け以降に、日銀が更なる上限金利の引上げに追い込まれる可能性も否定できない

ただし短期金利は別

ただし短期金利は、別物なので注意が必要かもしれない。元々アベノミクスが始まる前から短期の政策金利は実質ゼロが続いていた。今回の政策変更を受けて、短期の政策金利も早晩引き上げられると考えるのは時期少々だろう。実際に黒田総裁も、今回の会見で、コアの消費者物価が”実績値”として安定的に2%を上回るまでは、政策変更をしないと明言している。今後も指値オペの上限金利の拡大で”お茶を濁す”展開となるかもしれない。

何故このタイミング

一つ気になったのがタイミングだ。国債と地方債のスプレッド拡大は、為替市場が急激に円安に振れた夏から生じていた。本来なら秋口にでも修正を行うべきだったのだろう。やはり諸々の政治の状況を横目に見ている内に、この時期までずれ込んだのだろうか。

もう一つ考えられるのが、黒田総裁の任期との関係だ。あまり早く政策の変更を行うと”市場から次を催促”される可能性が高い。次期総裁へのバトンタッチのタイミングを睨んでギリギリの時期を選んだのかもしれない。そう考えると追加の措置は、黒田総裁のいる間は、もうないのかもしれない。

まとめ

まとめると次のような感じになる。

  • 日銀は地方債市場の反乱でYYCの修正に追い込まれた・・・市場の反乱!
  • 今後も長期金利の上昇圧力は続く・・・場合によっては指値オペ上限の追加引き上げも
  • インフレ率と為替相場を見ながら、長期金利の着地点を探る動き
  • 短期金利の引上げは、相当先・・・金融政策の完全な転換と考えるのは時期尚早
  • どちらにしてもアベノミクスのQQEは終焉を迎えた

年明けには、次期日銀総裁の名前も出てくるだろうから、あとはその人事待ちということになるが、それでも3ヵ月あるので予断は許さない。

おまけ

全く根拠はないが個人的には、市場を以下のような感じで見ている

  • ドル円・・・120円台までの円高
    黒田総裁も会見で振れていたが、日銀としては安定的な物価上昇が確認され、好循環が生まれるまで”実質マイナス金利”を維持する意向だろう。米国のインフレと利上げ動向にもよるだろうが、実質金利の日米比較で言うと、日本が低い状況が続く可能性が高いとみている。120円台に入ったら徐々にドルの買持をしようと思っている。
  • 株・・・弱含み
    既に米国株に関しては利上げを織り込んで調整している。日本株に関しては、多少金利が上昇しても依然として”実質金利が大幅なマイナス金利”であることに変わりはない。ということで大きく下げた局面では拾っていきたい
  • 債券・・・揉み合い
    足元でインフレは沈静化してきているが、高止まり傾向が続くと見ている。債券への大幅な投資は見送り
  • 買いたいもの・・・金(ゴールド)などのコモディティー
    ドル円など為替市場ばかりに目が行きがちだが、ドル円ともインフレに浸食されて通貨の本源的価値の下落が続くと考えている。円高が一服した局面で金(ゴールド)を購入したい。

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