11月12日に世界最大の暗号資産取引所の一つであるFTXが、米国で破産法第11条を申請して破綻したことが報道された。また経営者である バンクマン・フリード氏が、バハマからプライベートジェットで南米に逃亡しているとの話や、バハマ当局に拘束されたとの話も出ている。
いきなりFTXが破綻したとのニュースをSNSなどで見て混乱している人も多いだろう。今回は、今、手に入る情報を元に、あとは、全て私の個人的な想像で、今回のFTX破たん劇を分析してみたい。
私も被害者(かもしれない)
今回の破たん劇を見ていて被害に遭った人に同情していたのだが、よく考えると自分自身が被害に遭っていることに今朝気付いた。それは日本の暗号資産取引所のQUOINEに私も口座を持っていたからだ。確か前のビットコインバブルの時に、キャッシュバック目当てで口座を開いて、数万円の残高が残っていたような。そして、このQUOINEが今年の3月にFTXに買収されて、FTX-Japanになっていた。ちなみに日本のFTX-Japanの顧客資産は(一応)分別管理と信託保全されているらしいので、損害額は今のところ不明。こういう人は意外に多いかもしれない。
FTXってなに?
そもそもFTXと聞いて直ぐに会社名が思い浮かぶ人は、よっぽどの暗号資産オタクだろう。一般の人は、MLBの大谷翔平選手のCMかアメリカのスーパーボールのスポンサーで聞いたぐらいだろう。
FTX社は、世界に数多ある暗号資産取引所の一つで、設立は2019年と比較的新しい。起業したのは、MIT卒業という大層な学歴の、しかもバンクマンフリードという、”バンクマン”(銀行男)というこれまた凄いお名前の方が創業した会社らしい。
そして我ら孫正義率いるソフトバンク・ヴィジョンファンドをはじめ、ベンチャーの雄であるセコイア・キャピタルなど錚々たるベンチャーファンドからも出資を得ていた。まさに暗号資産業界のニュースター・イケイケの会社と言うことだったらしい(昨日までは)。
最近では、大谷翔平選手やフットボールのスーパースターをCMに起用したり、アメリカンフットボールのスーパーボールのCMを買い取ったりと派手に活動していた。また民主党の大口スポンサーにもなっていたらしい。
というWikiペディアに書いてある程度の知識しか私は知りません。
突然破綻の原因
この2019年創業ながらブイブイ言わせていたFTXが突然死した原因だが、コインデスクという暗号資産に関するニュース社の報道が発端らしい。FTXの関連会社であるアラメダ・リサーチと言う会社の資産の大半が、FTX社が発行した暗号資産のFTTだと暴露した。このアラメダ社に対してFTT社は、顧客から預かっていた資産を大量に貸し付けていた。そして、その担保として取ったのがFTTだったということが発覚というのが事の経緯。。
このFTTという暗号資産は、元々FTX社が発行したものだから、株式会社に例えると、自社の株を担保に顧客資産を貸し付けていたことになる。一種の「循環取引」のようなものにも見える。または「たこ足喰い」状態。
このニュースが流れると、FTXから大量の顧客資産の流出が起こり、最終的に支払い不能になったようだ。要は典型的な取付騒ぎ(バンク・ラン)が起きたようだ。そして、とうとう顧客資産の払い戻しに対応しきれなくなり、連邦破産法11条(所謂チャプター11)の申請に至ったようだ。
FTTのステーキングが破綻要因の一つか
今回破綻したFTX社だが2019年創業という比較的最近できた会社にも拘わらず、ここ数年で業容を急速に拡大させてきていた。その原動力の一つと見られるのが、自社発行の暗号資産FTTに対するステーキングと呼ばれる仕組みのようだ。
通常の暗号資産であるビットコインなどは、「ただ持っているだけでま全く儲からない」仕組みになっている。自前で高性能コンピューターを用意して「マイニング」と呼ばれる活動に貢献して初めていくばくかの報酬が得られる(かもしれない)仕組みになっている。
しかしのFTTが取っているのは、「FTTを持っているだけで追加でFTTが貰える」という仕組みで、これを暗号資産業界では「ステーキング」と呼ぶらしい。
このステーキングの仕組みは、元々は初代暗号資産のビットコインが大量の電力を消費することや、その仕組み上、ガバナンスがないため、バージョンアップや仕組みの変更が困難なことに対応するために考案された仕組みの様だ。
そしてFTX社は、自社発行のFTTを保有し続ければ、年率で8%近い報酬を支払うと謳っていたようだ。
ところが最近になると当初の目論見とは別に、「リスクなしで利益がでる」と勘違いした人間がFTXを持っているだけで金持ちになれるとFTTに群がったようだ。また発行体であるFTX自身も、この勘違いを煽りに煽って資金集めに利用したようにも見える。
冷静に考えればFTTは下がり続ける
しかし少し考えれば分かるが、ステーキングで8%の余分なFTTが配分されると言うことは、年間で少なくとも8%のFTTが増え続けることになる。株で言うと「希薄化」が発生する。
元々暗号資産自体には、不動産や株式のような実体的な利用価値やビジネスが背景に有るわけではない。価値があるとすれば「支払いツール」としての価値だけだ。現在のところ初期の暗号資産であるビットコインとイーサリアム以外には、支払いツールとしての利用価値は、ほぼゼロだ。そう考えると、暗号資産FTTは、ひたすら希薄化する以外にない。
アラメダ社がFTTを買い支えか
ただ、この時点ではFTTの値段が下がるだけでFTX社自体が吹っ飛ぶわけではない。では何故今回破綻に至ったのだろう。現状詳しい情報が皆無なので、以下は想像にすぎないか、以下のような経緯ではないかと思う。
第一は、アラメダ社がFTTの買い支えをしていたというものだ。元々このアラメダ社というのは、FTX創業者のバンクマン氏が最初に作った暗号資産ヘッジファンドのようなものだったらしい。そのアラメダ社の現行の役割は、FTX社でのマーケット・メーカー業務だったようだ。マーケット・メーカー業務とは、流動性の低い銘柄に対して、顧客に対し売値と買値を提示する仕事だ。これは暗号資産だけではなく、普通の株式でも行われている。NY証券取引所でも、銘柄ごとに「スペシャリスト」と呼ばれる専門の取引業者が存在する。そして、このマーケット・メーカーは「売値と買値の差額」で儲ける仕組みになっている。
アラメダ社は、当然のことながらFTTのマーケット・メイクも行っていただろう。通常マーケット・メイク業者は、売りが多ければ買値を下げ、買いが多ければ売値を上げるという感じで、取引を行っている。相場が荒れた場合には、売値と買値の差を広げて損失を回避する。あくまでも市場に流動性を供給するのが役目の仲介業者であり、売買が交錯していさえすれば、巨額の損失を被ることは無い。自社で巨額のポジションを抱えることも通常は無い。
しかしアラメダ社に関しては、FTTが値下がりするのを防ぐために、自社で「FTTの買い支え」をしていたのではないだろうか。買い支えるためには「巨額の資金」が必要になる。そして、この買い支え資金に対して、FTX社の顧客資産を流用したのかもしれない。
注意が必要なのは、これはFTX社や暗号資産に関する特有の話ではない。破綻する金融機関が行う良くある話だ。例えばバブル経済の際には、担保割れしたゴルフ場などの融資先の不動産を買い支えるために、多くの銀行が系列のノンバンクを使って迂回融資を行っていた。有名な「飛ばし」だ。リーマンショックの際にも、多くの投資銀行が自社が抱えている住宅ローン債権の価格を不当に操作していたとの批判が出ている(映画の「マネーショートにも、そんな場面が出てくる、住宅ローン関連のデリバティブ商品は仕組みが複雑すぎて、売った投資銀行本体しか時価を出せなかった)。
全体を俯瞰すると
ということで全体を俯瞰してみるとこういう感じになる。まずFTX社は、顧客を集めるために自社発行のFTTで8%という高利の「ステーキング」を行い、FTTを追加でばら撒いていた(要は撒き餌みたいなもの)。そして希薄化するFTTの暴落を防ぐために、関連会社のアラメダ社を使ってFTTの買い支えをしていた。そのアラメダ社の買い支え資金は、元もFTX社から、自社発行のFTTを担保に調達していた。
この仕組みを維持するためには、FTTの値段が上がり続ける必要がある。そうでなければ、FTTを保有している投資家(投機家)が、痺れを切らしてFTTを換金しようとするだろう。
またFTXに新規顧客が流入し続けてアラメダ社が買い支えた値段より高い値段で新規顧客がFTTを買い続ける必要もある(要は追加のバカの流入が必要)。典型的な自転車操業に陥っていたのだろう。
FTTを買い支えていたのがFTXと一体のアラメダ社なら、FTTが下落を始めるとFTXグループから資金が流出することになる。そうしなければFTTの担保価値が下落して、最終的に顧客資産の返還は不可能になる。典型的なネズミ講(ポンジースキム)になってしまっている。
最終的な疑問
しかし仮にFTX社が、FTTの発行残高に対して8%以上の利益を生み続けることが出来れば、この仕組みが存続できた可能性もある。要は買い支える資金が続けばという条件だ(新規のカモが流入し続ければ…)。
しかし2022年に入りFRBが急激な利上げを始め、GAFAMやNasdaqなどの株式市場が急落するのと軌を一にして暗号資産価格も暴落してしまった。この暴落を通じて、アラメダ社がFTTを買い支えようとして巨額の損失を被ったのかもしれない。実際にFTTの価格推移を見てみると、ビットコインをはじめとする主要な暗号資産が年初から半値以下に急落しているのに対して、FTTだけは奇妙なことに今回の破綻による急落の直前まで値を保っていた。
最終的な問題はこのFTTに纏わる取引や操作をバンクマン氏をはじめとするFTX自身が意図的に行っていたかどうかだ。この手の事件では最初は善意でやっていたものが、最終的には収拾が付かなくなることがよくある。日本のバブル崩壊でも、銀行の幹部たちは最初のうちは、不動産価格や株価がいずれは戻ると本当に信じていた。後に責任を取らされたのは、ババ抜きに敗れた可哀そうな人たちだ。
FTTの電気代はどうなる
今回の破たん劇で一つ気になるのが、FTX社が発行していた暗号資産FTTの行方だ。このFTTはステーキングという仕組みを採用している。ビットコインなどは世界中の多くのマイナーがコンピューターを自前で用意して電気代も支払いながらネットワークを支えている。私はFTTに関しては詳しくないのだが、もし、このFTTのサーバー代と電気代をFTX(だけ)が支払っている場合には、FTTのネットワークそのものが停止してしまい、ブロックチェーン自体が停止・消滅してしまう事態にはならないのだろうか。FTTの仕組みに詳しくない私には分からない。
取引所が弱点
今回の破綻劇で再び注目が集まるのが「取引所の脆弱性」だろう。法整備と分別管理が不完全の場合、今回の様な破たん劇が起きると、預け入れられた暗号資産は「一般債権」として扱われてしまう。当なると清算後の配当自体は通常2割程度となるのが通例だ。
このようは取引所のリスクを取り除くために、取引所と保管者を切り離す「カストディー(常任代理人、口)」のような仕組みの本格導入がが必要かもしれない。
ビットコインは今回も堅牢
ちなみに今回改めて感じたのが「ビットコインの堅牢性」だ。過去に起きた取引所の破たんに際しても、ビットコイン「そのもの」には、なんの影響もなかった。破綻したのは飽くまでも「取引所」だ。多くのボランティアに支えられているビットコインネットワークは、価格が下がることはあっても、今回の大規模破たんからも何の影響も受けていない。
ビットコインとの正しい付き合い方
今期界のFTX破たん劇を見て暗号資産に恐怖を抱いた人も多いだろう。しかし私自身は、少額ながら暗号資産を持ち続けるつもりだ。興味がある人は以下の記事もご参考に。

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