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ワールドカップのゴミ拾い炎上騒動について、大げさなことを呟いてみる

熱戦が繰り広げられているワールドカップ・カタール大会。日本代表チームが、初戦で強豪の王者ドイツに逆転勝ちしたことから、日本でも一気に応援気運が盛り上がっている。そんな中、日本人サポーターのゴミ拾いが一部で騒動になっている

バカラ賭博で有名な、元製紙会社会長がゴミ拾いを非難

切っ掛けは、日本人サポーターが試合後に「会場のゴミ拾いをして称賛を浴びた」ことらしい。元々日本では、Jリーグなどのサッカーの試合の後に、サポーターによるゴミ拾いが自主的に行わていた。このゴミ拾いをカタールでもやったところ、SNSやメディアなどで取り上げられて国際的に称賛されたそうだ。ここまでなら只の美談だ。

ところが、ギャンブルで会社の資金を流用したとして逮捕された大手製紙会社会長が、何故かこれにTwitter上で噛みついた。なんでもゴミ拾いをして称賛されるのを喜ぶことは「奴隷根性」の表れだそうだ。

この非難を受けてネット上では、様々な意見が出ているネット上の意見の多くは、ゴミ拾いに好意的だ。一方で、元東京都知事の国際政治学者も「海外ではゴミ拾いをするとゴミ拾いの仕事を奪うことになる…」云々と懸念を表明してする意見も散見される。

サポーターによるゴミ拾いの起源

この日本人サポーターによる自主的なゴミ拾いの起源に関しては、様々な説があるようだ。元々応援のために青いビニール袋を持参して行ったついでに、ゴミ拾いをしたという説が有力のようだ。ただ、日本のサッカー界で、このゴミ拾いがここまで広がったのは、地域のサッカーチームを地域のファンが一緒に支えるという意味が強く影響しているようだ。

奴隷は自分でゴミ拾いをしない

元製紙会社会長が、日本人サポーターによる自主的なゴミ拾いを「奴隷根性」と非難した。しかし、よく考えなくても分かるが、「奴隷は、自主的に仕事はしない」。あくまでも暴力や権力で強制されてしか働かない「自主的に働く」ということは、その場所や物を「自分のモノ」や「自分たちの公共空間」と考えているからだ。この意味から、自主的なゴミ拾いは「奴隷とは正反対」だと分かるだろう。むしろ「公共空間を自主的に管理する自立した市民の姿」だ。

村のドブ浚いが起源?

この話を聞いて思いついたのが、「自治会のドブ浚い」だ。私の実家がある地域でも、定期的に自治会が主催してドブ浚いが行われていた。基本的に住民は強制参加で、さぼる場合には「お茶代」と称して罰金が徴収されていた。

このドブ浚いの面白い点は、老いも若きも、富める者も貧しきものも平等だということだ。実際に私の実家がある地域でも、地域で一番大金持ちの「地主のお爺さん」が、率先し一番汚い所を担当していた。そしてドブ浚いの後には、その地主の大金持ちの庭で、住民にお茶とお茶菓子が振舞われていた。

要は、ドブ浚いは「一種の祭り」で、地域の共同体の結束を確認する手段として機能したように思う。

日本人サポーターがゴミ拾いをするのも祭りの一種で、サポーター同士の帰属意識を高めて結束を強くするイベントの一部と考えると、非難する必要は特に感じない。

公共空間を共有する

このドブ浚い祭りに関しては、政治学や経済学で有名な、所謂「共有地の悲劇」を避ける意味があったと思われる。住民が平等に共有地である「ドブを浚う」ことで、財産や地位を越えた共同体の意識を育む機能だ。冷静に考えれば、ドブの管理の責任は地方自治体などの道路管理者にあるのだろう。実際に都会では、自治体が専門業者に委託して管理を実施している例が多いようだ。だが、この場合には、住民は納税者となり、お客様意識が強くなって、自分たちで管理する意識は薄くなる。

渋谷のハロウィンは、ゴミだらけ

実際に同じ日本でも、渋谷などでは、有名なハロウィンの後に、通りに「ゴミが散乱」している状況が度々報道されいる。日本人でも時と場所によっては、平然と通りにゴミをまき散らすのだ。自分たちの公共空間との意識が薄れると、世界で称賛された日本人も忽ち「不道徳な人間」になるのだろう。ちなみに、この渋谷ハロウィンでも、一部の若者たちが、翌朝に自主的にゴミ拾いをしていることを付け加えておきたい。

ゴミ拾いは日本近代化の要因

日本は、欧米以外で、アジアで初めて近代化を成し遂げ、不幸な戦争の後にも、世界に関たる経済大国を作り上げることが出来た。この日本の特殊性を考える上で、大きな要因となったものの一つに、「江戸時代の村の住民による自主管理」があったとの説がある。

従来は、江戸時代の日本の村は、「重い年貢を課され、武士に搾取されている」と考えられてきた。しかし近年の研究では、実は江戸時代の農村の税率は、従来考えられていたのとは異なり、何と驚きの25%程度で、村人による自主管理がなされていたとの説が有力になっているようだ。この従来からの通説と、実態の乖離の原因として考えられているのが、「検地が行われなかった」ことらしい。江戸時代初期から中期に掛けて、日本各地で急速に新田の開発が行われ、農地の面積が急激に増えた。しかし、この新たな田んぼを幕府や各地の大名は、農民の一揆を恐れて検地できなかったらしい。要は年貢を課すことが出来なかったのだ。だから書類上の税率では、非常な高税率になっているが、実態は違っていたらしい。

確かに、もし江戸時代に、武士階級による苛烈な搾取が行われていたならば、辻褄が合わない点が多々ある。例えば幕府による度重なる「贅沢禁止令」だ。江戸時代には、各地で醤油や味噌づくり、日本酒の製造が広まった。また藍染や菜種などの換金作物の栽培も広く行われていたようだ。江戸や上方などの大都市では、商人たちが絹の服を纏い、贅沢な暮らしをしていた。このような初期の資本主義・市場経済が発展するには、かなりの資本と労働力の余剰が必要だろう。もし武士に苛烈な搾取をされていたのなら、この余剰資本と労働力は何処から出てきたのだろうと、以前から疑問に感じていた。農民や町人とは逆に、支配者であるサムライ階級は、時と共に没落していったのはご存じの通り。

日本で民主主義が成功した理由もゴミ拾い

日本が、明治以降急速に近代化を成功させ、戦後に世界第二位の経済大国に上り詰めたのは、元々日本全国で住民による村の自主管理が行われていたと考えると合点がいく。戦後に急速な民主化が成功裏に行われたのも、元々江戸時代から村人たちが自分たちで政治を行っていたと考えれば、昔に戻っただけだ。

反対に、中国や多くのアジア諸国では、かなり経済が発展したにも拘わらず、軍事独裁政権などの強権的な政治が続いている。これも、プランテーションや大地主を中心とした一種の「農奴制」が多くの国で続いていた(今も続いている)ことを考えると、理解できるかもしれない。最近ウクライナに戦争を仕掛けたロシアでも、民主主義が定着できない理由として、「農奴制」の影響が度々取り上げられている。

ゴミ拾いをする国民は素晴らしいが…塩梅が大事

こう考えると自主的にゴミ拾いをする日本人は、「公共空間に対する帰属意識が高く」「自主的に振舞う」「高度に文明化した国民」ということになる。欧米で主流の宗教に依らずに、これだけ高い自主性を発揮する国民も珍しい。これが日本が世界的に成功を収めた原因かもしれない。

ただ、逆に、この自主管理のシステムは、ある種の「息苦しさ」を生む原因でもあるだろう。例えば同じサッカーチームのサポーター同士で、毎回ゴミを撒き散らして帰る人が居れば、いずれ他のサポーターから「村八分」にされるかもしれな。コロナ下での「マスク圧力」も、この同調圧力の一種だろう。またこうなると一種の全体主義、共産主義だ。なにごとも塩梅が大事で、やりすぎると逆に害悪が目立つようになる。

一度ゴミ拾いをしてみたらいいかも

日本の伝統的な村社会では、一度でも規範に反する行動をとると「村八分」になる。逮捕され有罪判決を受け収監されたことのある元製紙会社の会長が、このゴミ拾いに反発を覚えたのも、この「村八分」と「息苦しさ」が原因かもしれない。

もしかしたら、ある種の村八分に遭っていると本人が感じているのかもしれない。歴史学の網野喜彦流に言うと、期せずして「無縁」に落ちてしまったのかもしれない。もしそうなら、SNSで他人の行為を非難す前に、一度自分だけでゴミ拾いをしてみるのは如何だろう。意外にも共感した人たちが集まって、新たな「縁」が生まれてくるかもしれない。

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