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現在の「敵基地攻撃能力」に関する議論は極めて危険だ!

現在、北朝鮮の相次ぐミサイル発射を受けて、政府自民党を中心に所謂「敵基地攻撃能力」の議論が進んでいる。また政府は、今まで議論されていなかった「シェルター」の設置の検討も始めるようだ。しかし現在、政府自民党が行っている「敵基地攻撃能力」の議論は危険だ。

ウクライナ戦争の教訓・・・日本に必要なのは核兵器ではなくて核シェルターだ | 団地君のゆるゆるセミリタイアライフ (poorblackgoat.com)

巨額の費用を投じたMD(ミサイル防衛)が無力化

今、政府が慌てて「敵基地攻撃能力」の議論を始めたのは、ロシア、北朝鮮や中国などが、新型のミサイルを配備したからだ。日本は1990年代末から所謂「ミサイル防衛システム(MD)」に壇巨額の資金を投じてきた。代表例がイージス艦に搭載されているSM3やパトリオットのPAC3ミサイルだ。数年前に議論になった「イージス・アショア」も、このMDシステムに含まれる。しかしロシアや北朝鮮が軌道変更が可能な「極超音速滑空体」を開発したことから、この巨費を投じたMDシステムが無効化してしまっている。

アバンガルド (極超音速滑空体) – Wikipedia

そこで泥縄式に北朝鮮がミサイル発射する前に攻撃する案が出てきた。

しかし、この議論は「極めて危険」だ。

いま議論されているのは、実質「先制攻撃」

今、政府自民党が議論している「敵基地攻撃能力」とは、実質的に「先制攻撃」案だ。具体的には、北朝鮮が、ミサイルに燃料を注入するなど、日本に対して脅威を与える行動に出た場合には、「事前に」北朝鮮のミサイル基地に対して長距離ミサイルなどを使って攻撃するというものだ。しかし既に指摘されている通り、北朝鮮などのミサイル攻撃を「事前に正確に判断」するのは不可能だ。

にも拘わらず先制攻撃を前提とする敵基地攻撃能力を持つと言うことは、日本が「先制攻撃」を行うということだ

日本軍の悪癖が蘇る

この議論の方向性は、日中戦争と太平洋戦争の際の日本軍の行動を彷彿とさせる。戦前の日本軍は際限なく戦線を拡大した。その発端は、1910年の「日韓併合」だ。

韓国を防衛するために満州に進出

日清戦争の結果として1910年に日本が韓国を併合すると、時の日本政府は韓国の併合が心配になりだした。そして当時、中国に対して南下政策を取っていたロシアから韓国を防衛するために、中国東北部の満州に進出した。そして勃発したのが、1904年の「日露戦争」だ。戦争の結果獲得したのが「満鉄」だ。

今度は「満鉄」を防衛するために「満州事変」を起す

満鉄を獲得すると、当時の日本軍と経済界は、その巨額の経済的利権に目が眩んだ。そして日露戦争の結果獲得した「満鉄」を守るために、今度は現地に駐留していた「関東軍」が起こしたのが、1931年に発生した有名な「満州事変」だ

昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー 671)
授業形式の語り下ろしで「わかりやすい通史」として絶賛を博し、毎日出版文化賞特別賞を受賞したシリーズ、待望のライブラリー版。過ちを繰り返さない日本へ、今こそ読み直す一べき1冊。 巻末に講演録『ノモンハン事件から学ぶもの』(28ページ)を増補。

満州を防衛するために中国戦線拡大

一旦「満州国」を建国すると、今度は満州の防衛が心配になりだした。そして日本陸軍は中国北部への侵攻を開始してしまった。とうとう中国大陸での戦争まで戦線を拡大してしまったのだ。そして結果はご存じの通り。中国本土に100万人近い兵士を展開し、中国軍との間で15年に及ぶ「泥沼の戦い」になってしまった。

決定版 日中戦争(新潮新書)
日中戦争は近代日本の対外戦争の中で最も長く、全体の犠牲者の数は日米戦争を凌駕する。なぜ、開戦当初は誰も長期化するとは予想せず、「なんとなく」始まった戦争が、結果的に「ずるずると」日本を泥沼に引き込んでしまったのか。輪郭のはっきりしない「あの戦争」の全体像に、政治、外交、軍事、財政などさまざまな面から多角的に迫る。現代最...

大損害で引くに引けなくなる

日中戦争が勃発し戦線が中国全土に拡大すると、日本軍に膨大が損害が出た。日本では国家総動員令が発動され、連日の様に報告される膨大な戦死者に日本陸軍の首脳陣は、責任問題から「引くに引けなくなった」

仏印(ベトナム進出)で太平洋戦争勃発

中国での戦争が泥沼化すると、事態を打開するために日本軍は、仏印(現ベトナム)に進出した。これは、日本に抵抗を続ける中国国民党への英米からの補給路を遮断するためだった。そして、この仏印(現ベトナム)への日本軍の進軍が、米国の反発と経済制裁を招き入れた。原油の禁輸を受け、最後は太平洋戦争の開戦に繋がった

失敗の本質
敗戦の原因は何か? 今次の日本軍の戦略、組織面の研究に新しい光を当て、日本の企業組織に貴重な示唆を与える書。ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ沖海戦、沖縄戦という大東亜戦争における6つの作戦の失敗の原因を掘り下げ、構造的問題と結びつけた日本の組織論の金字塔。

インパールで数万人餓死

この日本陸軍の愚行のフィナーレを飾るのが「インパール作戦」だ。日本に抵抗を続ける、蒋介石率いる中国国民党軍への補給路を遮断する目的で、日本軍はミャンマーとインドの国境地帯にあるイギリス軍を攻撃した。補給がない状況でジャングルと山岳地帯を横断するこの作戦には10万人近い兵が投入された。そして8割以上が「餓死」したと言われている。

インパール (文春文庫)
太平洋戦争で最も無謀だったといわれるインパール作戦。昭和19年3月、ビルマから英軍の拠点があったインド北東部・インパールの攻略を目指した日本軍は、この作戦で歴史的敗北を喫した。「インパールの悲劇」は“日本の東条”とビルマの“小東条”牟田口廉也の握手から始まった──史実に基づいた考証と冷静な筆致と気迫で、涙と憤りなしでは...

全ては「韓国併合」から

この戦前の日本陸軍の行動を見れば分かるが、全ての始まりは「韓国併合」だ。そこで止めておけばよかったのに、既得権を守るために際限なく戦線が拡大してしまった。そして失敗を隠ぺいするために更なる戦線拡大に進んでしまった。結果は「破滅」だ。

太平洋戦争の日本海軍

韓国併合からインパールに至る愚行を繰り返したのは日本陸軍だけでない。海軍も同じだ。

トラックからラバウルに戦線拡大

太平洋戦争が勃発すると、日本海軍は南太平洋の「トラック島」に連合艦隊を進出させた。一旦進出すると今度は、トラック島の防衛が心配になりだした。そしてトラック島防衛のために、英領だった「ラバウル」に進出し、大規模な航空基地を建設した。有名な「ラバウル航空隊」のラバウルだ。

ラバウルからガダルカナル

一旦ラバウルに航空基地を建設すると、今度はラバウル自体の防衛が心配になりだした。そこで、更に遠い「ブカ」や「ブイン」といったような島に航空隊を進出させた。

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膨大な兵士が「餓死」

その後も明確な戦略目標のないまま、標高4千メートルの山脈と深いジャングルの広がるニューギニアとガダルカナルに兵を進めた。その結果はご存じの通りだ。インパール作戦と同様に、ニューギニア作戦とガダルカナルでは、少なくとも数万人の兵士が「餓死」した。

ガダルカナル (文春文庫 (115‐10))
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地獄の日本兵―ニューギニア戦線の真相―(新潮新書)
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日本を防衛する正しい方向性

戦争でゼロリスクはあり得ない

今回の実質的先制攻撃案を含む敵基地攻撃能力に関する議論の前提となっていると思われる点が二つある。一つ目は上に記した「MDシステムの無意味化」の責任回避だ。そしてもう一つは「ゼロリスク思考」だ。これは、日本本土の財産や生命の損害を「ゼロ」にするという発想だ。しかし戦争を想定している以上、「損害ゼロ」は、あり得ない。政治家は、このことを国民に説明周知すべきだ。

敵基地「反撃」能力に限定

敵基地攻撃能力を保有すること自体は問題ではない。問題は、現在の議論が「実質的先制攻撃」を前提としていることだ。この先制攻撃前提の防衛政策は、北朝鮮や中国にみならず友好国の韓国や台湾などから日本が先制攻撃を意図しているかもしれないという「あらぬ疑惑」を招きかねない。その結果は際限のない軍拡競争だ。仮に国内で損害が予想されようとも「先制攻撃」案は封印すべきだ。

攻撃されても生き残れる体制の構築

先制攻撃を封印した上で取るべき方策は「攻撃に生き残り反撃できる能力の構築」となる。この生き残り能力には、当然シェルターの構築も含まれる。

核兵器の保有も許容

そして先制攻撃案を封印し生存能力を維持したたうえで、反撃のための攻撃能力を持つべきだ。その際には長距離攻撃能力には制限を設けるべきではない。必要なら「核戦力」も含めるべきだ。

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