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相場今昔物語:1980年代(2)・・・終わりよければ全てよし、レーガノミク スの巻

絶好調だった株式市場のラリーも、いよいよ終焉の時が近づいてきたようだ。ここ10年ほどの異様な米国株の上昇しかしらない若い投資家の中には、この事態にどう対処していいか戸惑っているひとも多いかもしれない。そこで、「相場・今昔物語」と称して、昔を知っているジジイが、当時の状況を伝えてみたい。今回は1980年代。日本が歴史にその名を轟かす「バブル経済」に沸いていた一方で、「アメリカ経済は終わった」と思われていた1980年代のお話その2、レーガノミクスの巻。

レーガノミックス

レーガン大統領

レーガン大統領と聞いてもピンとこない人も多いかもしれないので、簡単に紹介してみる。1980年代にアメリカ大統領を2期8年務めた第40代大統領だ。レーガンは元々はハリウッドの売れない俳優だった。俳優としてはぱっとしなかったが、ハリウッドの俳優組合の委員長となり出世。1950年代の赤狩りの時代には、多くのハリウッド関係者が共産主義者のシンパとされたのに対して、レーガンは、保守派のハリウッド俳優として名を挙げた。実はFBIのスパイとして他の映画関係者の情報提供をしていたとの噂も根強い。その後は、当時普及したテレビで家電製品や日用品のCMで全米で有名になった。今で言えばテレビショッピングのホストみたいなもの。その後は知名度を利用してカリフォルニア州知事になり、最後は大統領にまで上り詰めた。

レーガノミクス – Wikipedia

ロナルド・レーガン – Wikipedia

ブードゥー経済学

1980年代の大統領選挙では、それまで芸能人政治家と思われていたレーガンが、現職のカーターを破って大統領に就任した。そしてレーガンが経済政策に採用したのが、当時異端視されていた「サプライサイド経済学」と呼ばれる政策だ。この政策の肝は「減税すれば>景気がよくなり>税収が増え>財政赤字が減る」というロジック。「減税すれば税収が増える」という部分が矛盾していると、正統派マクロ経済学者から総スカンを食らった。ついたあだ名が「ブードゥー経済学」。

実際は軍事費による公共事業

実際に実行された経済政策は、当初の説明とは大幅に異なり「減税、軍事費増大、規制緩和」の三点セットが実行された。結果、アメリカの財政赤字と貿易赤字が急増し当時「双子の赤字」と呼ばれアメリカ経済の衰退の象徴と見られていた。しかし、軍事費増大が一種の「公共工事」のような効果を発揮して景気が回復。また財政赤字の増大による長期金利の上昇から高金利目当てに海外から資金がアメリカに大量流入しドル高となった。このドル高の結果、日本とドイツを中心とする海外からの輸入が急増し、アメリカの工業は大打撃を受け、製造業は壊滅状態になった。ブルース・スプリングスティーンの歌が大流行したのはこの頃。だが結果として、貿易赤字にも拘わらず、ドル高となったことから「インフレにならなかった!」。

規制緩和・・・インターネット、LCC、デリバティブ

また規制緩和は、様々な新産業を生み出した。この規制緩和と民営化路線は、今では「新自由主義」と批判されることも多いが、私たちが快適な生活が送れるのは、この時の規制緩和のおかげだ。

航空業界民営化・・・LCC誕生

規制緩和で特に有名なのが「航空業界の規制緩和」。この緩和を受けて、今のLCCの元祖となるような「格安航空会社」が数多誕生した(トランプもトランプジェットと言う格安航空会社を経営)。雨後の竹の子のようにアメリカで誕生した航空会社の殆どは競争に耐えきれず、その後倒産したが、その中から生き残ったのが有名なLCCの「サウスウエスト航空」だ。

通信の自由化・・・AT&T解体

また通信会社の民営化も実行された。それまでアメリカでも巨大独占企業のAT&Tが通信事業を独占していた。このAT&Tの分割民営化が実行された。このAT&Tの分割民営化を真似したのが、日本の電電公社分割民営化。お馴染みのNTTとドコモだ。1980年代にもし今のように家に専用のデーター回線を引こうとすると月30万円以上かかっていた(しかも速度は128K)。みんなが今自由にインターネットを利用できるのは、この時レーガン大統領とイギリスのサッチャー政権が通信の民営化をしたからだ。

金融ビックバン・・・デリバティブ市場の誕生

また金融市場の大幅な規制緩和が実行されたことと、高金利で債券市場が乱高下したことから、デリバティブが勃興、世界一のアメリカ金融産業の基礎を築くのに貢献した。ただ同時に労働組合が壊滅的な状態に追い込まれ、今のアメリカの極端な格差社会の原型が出来たのもこの時期。

スターウォーズ構想(SDI)

戦略防衛構想 – Wikipedia

レーガン政権の政策の柱の一つだったのが、所謂SDI構想。レーザーやビーム兵器で核兵器を無力化しようというSF映画紛いの計画だ。発案者と言われているのは、水爆を開発した物理学者で、スタンリーキューブリック監督の「博士の異常な愛情」という映画のモデルになったと言われている「エドワード・テラー博士」だ。このテラー博士が、核戦争を懸念していたレーガン大統領を丸め込んだと言われている。この戦略防衛構想(SDI)は、現在日本も採用しているミサイル防衛構想の元祖。

博士の異常な愛情/または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
時は冷戦の真っ只中。アメリカの戦略空軍基地司令官リッパー将軍が突然、ソ連への水爆攻撃を命令する。ところがソ連が保有している核の自爆装置は水爆攻撃を受けると10ヶ月以内に全世界を破滅させてしまうと判明。両国首脳陣は最悪の事態を回避すべく必死の努力を続けるが、水爆はついに投下されてしまう・・・。

エドワード・テラー – Wikipedia

SDI構想自体は、1980年代当時から「実現不可能なSF映画もどき」と思われていて、実際に実現はしなかった。ただ、1980年代に膨大な軍事費が、特に航空宇宙関係やIT関連企業に流れ込んだことが今のIT産業の基礎を作ったとの説もある。実際に1990年代以降にIT産業で成功した人間の中には、1980年代に軍需産業で働いていたエンジニアや科学者が多く含まれる。1990年代に冷戦が終了すると、この科学者達の多くが民間企業に流出した。

M&A大流行

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レーガノミックスの1980年代を通じて勃興したのが「M&A」産業。特に巨大たばこ食品コングロマリットを買収した買収ファンドの「KKR(コールバック・クラビス・アンド・ロバーツ)」とジャンクボンドの大様と言われた「マイケル・ミルケン」が有名。またこの頃コンピューターを利用した投資手法が普及し出した。ミルケンは、後に2008年のリーマンショックの際に有名になった「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ」の元になる、企業の倒産確率をコンピューターで解析する手法を利用して、格付けの悪いジャンクボンドでも分散投資すれば、低リスクで高利回りの運用が出来ると喧伝して回り、ジャンクボンド市場を実質的に一人で作り上げた。ミルケンとその相棒と言われた買収業者のアイバン・ボースキーは、後にマイケル・ダグラス主演でウォール街として映画化されている。ちなみにミルケンは結局最後にインサイダーで逮捕された。

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中流家庭の崩壊・・・チャプター11乱用

レーガノミクスの負の側面として一番に挙げられるのが「中流家庭の崩壊」かもしれない。これはM&Aの流行と密接に関係している。借金を利用したM&Aであるレバレッジド・バイアウトが流行した結果、経営陣が手っ取り早いリストラ方法として「アメリカ版会社更生法のチャプター11」を乱用するようになった。一旦会社を倒産させてしまえば、企業の負担だった「従業員の年金と健康保険」をチャラに出来る。そして年金は会社負担の少ない確定拠出の401Kプラン(日本のiDeCo)に無理やり変更してしまえば企業業績は上向く。この手法を使ってM&Aを実行した買収ファンドは巨額の利益を上げていった。酷いケースなどは、それまで引当金として積みあがっていた巨額の年金や退職金のキャッシュを強奪するために、わざと企業にジャンクボンドで巨額の負債を負わせて一種の計画倒産を引き起こし、現金を配当などの形てファンドに資金を還流させて強奪する手法もとられていた。

円高で財政赤字を実質チャラ

この異端の経済政策でる「レーガノミクス」の最後にやって来たのが「超円高」だ。1985年の9月に、日本の竹下大蔵大臣(北川景子の旦那で有名なDAIGOのお爺さん)を含むG7の大蔵大臣と中央銀行総裁が、アメリカのベーカー財務相からNYのプラザホテルに呼び出された。そこで無理やり同意させられたのが、有名な「プラザ合意」。このプラザ合意で大幅な「超円高」時代が到来した。それまで積み上げられていたアメリカ政府の借金は、実質的にチャラにされてしまった。1972年のニクソンショックに続いて、またもや「ドルの切り下げ」でアメリカは財政赤字(と貿易赤字)を実質的に帳消しにするという荒業。

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戦後の日本は脅威の経済復興を遂げ、終戦からたった11年で、政府の経済白書が「も...

冷戦崩壊・・・結果良ければすべてよし

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当初は「ブードゥー経済学」と正統派経済学者から散々馬鹿にされた「レーガノミクス」だが、結果としてはアメリカ史上最長の景気拡大を達成し、アメリカの経済規模は10年で2倍近く成長した。また「スターウォーズ構想」とこれも馬鹿にされたSDI計画も、ふたを開けてみると、結果としてソビエト連邦の崩壊を招き、何と「冷戦を終わらせて」しまった。

レーガンはアルツハイマー病だった?

レーガン大統領暗殺未遂事件 – Wikipedia

このレーガン大統領に関しては、辞任後の1993年にアルツハイマー病になっていることが公表された。そして、その後関係者から驚くべき証言が出ている。レーガン大統領は、就任から間もない1981年3月にワシントンで銃撃されている。一命を取り留めたが脇の下から入った銃弾が心臓をかすめる重傷を負った。実は、この銃撃事件の後遺症でレーガン大統領は任期途中からアルツハイマー病を発症していたというのだ。プラザ合意が発表された1985年には、既に時間の感覚がかなり怪しくなっていたらしい。それでは誰が政権を担当していたかと言うと、側近のベーカー首席補佐官やシュルツ国務長官など少数の側近が実質的に仕切っていたらしい。またレーガンがアルツハイマー病を発症していたことは、ホワイトハウスに常駐していたマスコミも知っていたそうだ。大手メディアの間では、レーガンの認知症を国民に隠すとの暗黙の了解があったらしい。つまりレーガン政権は途中から実質的に「大統領なし」で運営されていたことになる。レーガン政権が当初の酷い下馬評を引っ繰り返して、史上最高の偉大な大統領と言われる本当の理由は、実はこの辺りにあるのかもしれない。

大分断の発端

レーガン政権の負の遺産としてもう一つ上げられるのが、現在も深刻化しつつあるアメリカの政治的分断の切っ掛けを作ったことがあるだろう。ケネディー政権以降に民主党中心に公民権などリベラル化に突き進んでいたアメリア社会が、共和党主導の保守政治に転換するターニングポイントになった。エバンジェリスト(福音派)と呼ばれるキリスト教原理主義派の勢力が増して、全米自動車労組など強力な組合が叩き潰されて株主主義が浸透した。また現在問題になっているアメリカ最高裁裁判所判事への保守派の任命が行われ、今に続く最高裁判事の保守化の端緒を作ったのもレーガン政権だ。

教訓:ステレオタイプは疑ってかかれ

当時はジャパン・アズ・ナンバーワンで、21世紀は日本の世紀と言われていた。逆にアメリカは没落した帝国で、アメリカ経済は終わったと言われていた。しかし今振り返ってみると1980年代の米国で、21世紀の世界の原型が形作られたことが分かる。冷戦を崩壊させグローバル化の切っ掛けを作ったのはレーガンのSDI構想だ。また大幅な規制緩和による所謂「新自由主義経済」は、格安航空会社のLCCやIT産業を生み出した。またデリバティブなど新しい金融産業を誕生させたのもこの時代だ。こうして振り返ると、その時に世間で言われていることが如何に当てにならないことが良く分かる。最近のアメリカ経済万歳、日本経済は少子高齢化でオワコンというステレオタイプは常に疑いの目を向けてみるようにしたい。

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