2022年年初から始まった世界的な株価下落ですが、このブログを書いている5月末の時点で一旦下落も一服の兆しを見せているようです。しかしながら、物価上昇率は依然高止まりしており、今後もFRBの連続利上げが予想されることから予断を許さない状況です。殆どの投資家は、株価下落がこの辺りで止んでほしいと思っているでしょう。そんな中、今回も敢えて世の中の空気を読まずに、株式市場に悲観的な予想ばかり並べてみようと思います。
SNSは、米株礼賛の嵐
去年(2021年)暮ぐらいまでは、SNSには、米株礼賛の言葉が溢れていました。「アメリカ株は長期的に見ると確実に上がる!」と本当に確信しているのか、単なる自己暗示なのか、はたまた情弱相手の情報商材屋なのかは分かりませんが、同じような言葉を呟く人で溢れていました。そのロジックは大体同じです。並べてみると、こんな感じでしょうか。
- アメリカの人口は増え続ける、よって経済成長は止まらない
- 世界中から優秀な移民が集まる
- 資本主義の本場は、アメリカ
- GAFAMなどIT産業最強
しかし天邪鬼に反論すると以下のように言えなくもありません
- 人口が多くても成長するわけではない・・・ナイジェリア、パキスタン、フィリピン…
- 今後世界中で高齢化が進行して、今のペースの移民は維持不可能なのではないか
- 市場経済の行き過ぎで、格差が極端な水準まで拡大し、維持不可能なのではないか
- IT産業も規模が拡大しすぎて限界なのではないか(これ以上の高成長は望めない)
アメリカ社会の変調
「勝って兜の緒を締めよ」ではないですが、絶好調な時ほど足元を見つめ直すのが賢明です。絶好調に見えるアメリカ経済ですが、冷静に観察すると社会の変調が目につきます。
極端な格差の拡大
日本ではあまり報道されませんが、アメリカではコロナ禍で極端な格差の拡大が起きています。ホームレスが激増して、IT産業で有名なシリコンバレーのあるサンフランシスコ界隈でも、急騰した家賃を払いきれなくなった人々が、ホームレスになるケースが増えているようです。有名なTwitter社の本社の前にもホームレスが沢山寝泊まりしているそうです。
オピオイドの蔓延
トランプが大統領に当選した前あたりから話題になっていましたが、今アメリカでは、オピオイドという合法的な鎮痛剤の乱用が蔓延しています。筋肉痛や関節炎の痛み止めとして医師が気軽に処方箋を発行したことから、依存症になる患者が続出。折からのコロナ禍で、失業した人たちの間にも、手軽な合法麻薬としてオピオイドが蔓延しています。特に肉体労働者のブルーカラーと呼ばれる白人の労働者階級に急速にオピオイド中毒が広まっているようです。そして、この白人ブルーカラー層がトランプ支持者の中心です。
毎月のように銃の乱射事件が起きている
今月に入っても大きな乱射事件だけで3件起きています。特にテキサスの小学校で起きた銃の乱射事件では、小学生を中心に21人もの犠牲者がでました。またテキサスの事件と直前NY州北部のバッファローで起きた銃の乱射事件の犯人が18歳の青年だったことも話題になりました。この乱射事件の犯人は、近い将来アメリカでラテン系が多数派になり、白人が少数派になるという「グレート・李プレースメント」という陰謀論を信じていたことも共通項です。
また銃の乱射事件直後に、NRA(全米ライフル協会)が、よりにもよって銃の乱射事件が起きたテキサスで大会を開いています。その大会では、保守派のテキサス選出のテッド・クルーズ上院議員やトランプ元大統領などが、「乱射犯から子供を守るために銃が必要だ!」と銃の所持を擁護する発言をして物議をかもしたりしています。
国内の政治的分断が深刻化
加えて国内の政治的が、ここに来て抜き差しならない事態にまで深刻化しています。今月に入ってから米最高裁判所から流失した文章によって、人工妊娠中絶を合法化した「ロー対ウエイド」の判例を見直す可能性が出てきたことから、保守派とリベラル派の対立が再び激化し始めています。カリフォルニアやNYなどリベラルな州では、南部やテキサスなどの南西部の保守的な州とは、同じ国ではいられないと独立の動きまで(まだ少数ですが)出てきているようです。
インフラが意外に脆弱
コロナ危機によるサプライチェーンの混乱で改めて露呈したのが、アメリカのインフラの脆弱性です。アメリカ西海岸の港湾では、中国からのコンテナ船が大量に滞留したままです。中国からの大量の輸入に支えられているにも拘わらず、アメリカ西海岸で大型コンテナ船を扱える港は、実質的に5つほどしかないようです。この5つの港で全米で消費される輸入品の取り扱いを賄わなければなりません。また国内のトラック輸送もドライバー不足でボトルネックが発生しているようです。既にサプライチェーン問題が発生してから2年以上たちますが、根本的な解決が図られていません。中国や東南アジア、ドバイなどが、ここ20年程で港湾・輸送システムに大規模な投資をして来たのとは対照的です。
ウクライナ戦争・・・グローバルシステム崩壊
2022年2月から始まったウクライナ戦争は、1989年のベルリンの壁崩壊以来続いた冷戦後のグローバル化の終焉を意味するのかも知れません。そうなるとグロバル化を最大限利用してきたアメリカ経済が最も大きな打撃を受けることになります。モノ作りを放棄して、ITと金融という情報で世界を支配してきたアメリカ経済が10%近いインフレに見舞われているのは、その兆候かもしれなません。また最近の急激な金利上昇も、金融とITの世界の終焉を意味しているかもしれません。
またウクライナ戦争勃発と同時に発動されたロシアに対する金融制裁で、ドルに対する信認も低下してきています。そもそも大幅な経常収支赤字を抱える米国は、常に外国からの資本の流入を必要とします。ところが、ロシア人が保有しているドル資産の凍結が行われたことで、資産の置き場としてのドルに対する信認が大きく揺らいでいます。今のところ他に選択肢がないためドル覇権事態の動揺は避けられていますが、例えば中国人の資産に対して同様の措置が取られる可能性が出てくれば、大規模な資金流出の可能性も、あながち否定できません。
中国の台頭
既知のことですが、中国など新興国の台頭も顕著です。今回のコロナ危機で改めて中国のパワーを認識した人も多かったでしょう。特にマスクや人工呼吸器など多くの物資の製造が中国に集中していたことが改めて認識されました。多くのアメリカ企業の製品も中国や東南アジアで製造されています。そして一度サプライチェーンが何らかの理由で寸断されると途端に物不足が発生してしまいます。中国経済の急成長が終わったと思っている人も多いようですが、中国がモノ作りで世界の主導権を握っていることは紛れもない事実です。そして中国から東南アジア、インド、中東にかけての地域は、アメリカ抜きで経済が廻り始めている様に見えます。
合法的な租税回避による株価底上げ
昨年までは、一見絶好調に見えた株価に関しても、振り返ってみれば急騰したのは、この10年程に過ぎません。S&P500は、この10年で2倍以上に急騰していますが、多くはトランプ政権誕生後の過去5,6年の話です。この10年間に何が起きたかと言えば、勃興異様な低金利と低金利を背景とする自社株買いによる人為的な株価底上げと言えなくもありません。
またGAFAMを筆頭にほとんどのグローバル企業は、アイルランドなどのタックスヘブンに商標やプログラムなどの知的所有権を移転することで法人税の支払いを回避していました。日本でもA****nが、日本で法人税を支払っていないことが問題になっています。自社株買いとタックスヘブンには共通点があります。「税金を払っていない」です。アメリカ企業全体で見ると、「合法的な租税回避」による株価上昇と言えなくもありません。
まとめ・・・それでも投資は止めない
色々アメリカ経済と米国株に対して悲観的なことばかり並べてみましたが、私自身がアメリカ株に対する投資を止めるかと言えば、答えは「止めない」です。依然としてアメリカが世界一の経済力と軍事力を持っていることには変わりはありません。また飽くまでも相対的な話ですが、金融資産への法的保護が世界一である点も変わりません。ポートフォリオの中に組み込まれている米国株や米国債は、そのまです。
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