最近気になる本を手にした。”2050年世界人口大減少”と言う本だ。世界の人口は国連による従来の推計だと今世紀末まで増え続け、100億人の大台に乗るとされていた。しかし、この本によると世界中で少子化が進行していて、何と30年後の2050年には、今の日本と同じように人口減少が始まるというのだ。この予測は、特に資産運用にとって致命的な影響を及ぼす可能性が高い。今回は、この人口減少問題を紹介してみたい。


もうすぐ世界中で人口が減り始めるらしい
人口減少と聞くと、ほとんどの人が日本の「少子高齢化」を思い浮かべるだろう。ここ何年かで「少子高齢化で日本オワコン」は、多くの日本人の常識になってきた感がある。ただ世界の人口に目を向けると、国連などから発表される予測では、世界全体の人口は今後も増え続けて、21世紀の末には100億人を超えると言われていた。世界経済が成長し続け、株価も上昇し続ける大前提が、この世界的人口増加トレンドだ。ところが、この本によると、何と日本以外でも近い将来人口増加が頭打ちになるそうだ。
東南アジアでも少子化
実際に子だくさんの印象の多い東南アジアのタイやベトナムでも出生率が急低下している。以前と同じペースで人口増加が続いているのは、カトリックの影響で国民が避妊に否定的なフィリピンぐらい。労働力が足りなければ「ベトナムから技能実習生呼べばいい」とという安直な発想はもう通用しない。経済発展もあり、東南アジアから人を呼ぶのは今後難しいかもしれない。
第1‐補‐5表 アジアの主な国・地域の人口及び合計特殊出生率(平成30年版)

こちらは令和3年版(なぜかタイが除かれている)

中国では、近じか壊滅的人口減が始まる
二人目容認も子供増えず
一人っ子政策で有名な中国では既に少子高齢化の初期段階にある。2015年に一人っ子政策を解除。2019年からは3人目の子供も一部認める政策に転換したものの出生数は減少を続けている。2021年に約14億人で人口がピークアウトしたようだ。2022年からは実際に人口が減少し始める可能性があるらしい。しかも今後は日本を上回るペースで超高齢化社会に突入していく。
女性の多くが不妊手術済み?
中国の出生数に関しては、かなり怖い話が書かれている。中国の合計特殊出生率は2021年現在日本より低い1.2~1.1程度と推計されている。国連の予想では、この合計特殊出生率が、1.7程度まで緩やかに回復する前提になっている。だが実際には、今よりさらに低下する可能性が高いそうだ。子供の教育費の高騰や女性の社会進出など日本と同じ理由が述べられているが、もう一つ怖い理由が書かれている。それは多くの女性が「不妊手術」を受けているらしいとのこと。1人目を出産した女性のかなりの割合が「不妊手術済み」の可能性があるらしい。もしこれが事実なら、中国政府がいくら「二人目、三人目容認」としても、子供は増えない可能性がある。
中国人口大崩壊が始まる?
もし中国女性の多くが不妊手術を受けていて、今後も今の1.1~1.2程度の出生率が続くとなると、2050年頃から中国の「人口大崩壊」が始まる可能背があるとのこと。その現象は凄まじく、超高齢化社会の日本の約2倍近いスピードで人口減少が加速度的に進む可能性があるらしい。もしこのシナリオが当たるとすると、今14億人を超えている中国の人口だが、2100年頃には7億人台まで減少している可能性があるそうだ。
インデックス投資の前提が崩れるかもしれない
コロナ下の株高で話題になったFIRE(経済的に自立して早期にリタイアする)には大きな前提がある。それは株式市場が年平均7%程度で成長し続けるということだ。この根拠になっているのは、過去100年程の間に世界の経済が成長し続けていたということだ。そして経済成長に伴って株価も上昇し続けていた。
しかし世界の人口が頭打ちになり、減少に転ずるとしたらどうだろう。今まで人類の歴史を通じて、世界の人口は増え続けていた。特に産業革命後の世界の人口の伸びは凄まじく、まさに「指数関数的」に増加してきていた。200年前の丁度フランス革命の起きた当時の世界人口は10億人と推定されている。200年前には、世界全体で10億人しか人間がいなかったのだ。それが今では80億人!に増えている。
そして株式投資の前提になっているのは、正に人口が爆発的増加をした過去100年程度のデータだ。もし今後世界の人口がピークアウトし減少に向かうようなら、この大前提が狂うことになる。
今のインフレはその兆候か?
そこで気になるのが今の世界的インフレだ。一応コロナ禍でのサプライチェーン混乱が原因ということになっている。ただアメリカのでのサプライチェーンの混乱の原因として言われているのが、トラックドライバーの不足だ。そしてトラックドライバー不足の大きな原因がトラックドライバーの高齢化だそうだ。アメリカの長距離トラックドライバーの平均年齢は50歳を超えているらしい。また今のところインフレの原因は「物はあるが、運べない」というのが前提だ。だが中国で人口減少が本格化すると「人が居なくて作れない」に、いつのまにか理由が変化するかもしれない。
インフレで格差是正か
ただ人口減少と労働力不足には福音もある。格差是正だ。人口減少による労働力不足は、最終的に賃金の上昇をもたらす可能性が高い。1989年のベルリンの壁崩壊で始まったグローバル化で先進国では極端な格差が拡大している。中国を中心とする大量の低賃金労働者が世界的な賃金を押し下げ、インフレを抑制したからだ。その結果として30年近く世界的な低金利となり、株式や不動産などの資産価格を押し上げ、「持てる者と持たざる者」の格差を拡大させた。しかし今後は、世界的な人口減少と労働力の不足が、この流れを逆転させるかもしれない。
日本ではこれから逆デフレ
日本はどうなるのだろう。日本経済は失われた30年でデフレに苦しんできた。しかし、世界の人口、特に中国の低賃金労働者が枯渇し、インフレの時代が再来するとなると、世界で一番影響を受けるのは日本になるかもしれない。
外国人嫌い
超高齢化社会で近い将来、労働力の大幅不足が予想されるにもかかわらず、多くの日本人には外国人アレルギーがある。今の時点でもネットには所謂ネトウヨによる嫌中、嫌韓の言葉が溢れている。今後も大幅な外国人移民受け入れは政治的に不可能だろう。
世界一難しい日本語
加えて日本語という学習が難しい「超ローカル言語」が話せないと生活が難しい。日本が世界第二位の経済大国だったころは、外国人が日本語を学習する意味はある程度あった。しかし今後日本の人口が激減し一億人を割り込むようになるとするとなると、外国人が日本語を習得する意味は大幅に薄れる。今はベトナム人などを中心に「技能実習生」として外国人労働者を受け入れているが、ベトナムなど東南アジアでも少子化が進行している。将来に渡って日本に外国人労働者が来てくれる保証はない。
日本では超インフレの30年が待っているかも
超高齢化に加えて、世界で人口が頭打ちになるとすると、今後の日本は、長期のデフレから逆転して、インフレの30年が始まるかもしれない。超高齢化で労働人口が不足し、海外から移民が来ないとなると、「超インフレの日本」という新たな失われた30年の到来となるかもしれない。高齢者を中心にインフレで年金の実質価値が大幅目減りし、日本人の生活レベルが大幅にさがることになるかもしれない。
人口減少=インフレ時代の影響
もし今後世界人口が頭打ちとなると仮定するとどうなるだろう。ちょっと予測してみた。
インフレが常態化する
冷戦終結後の30年から逆転して、インフレが常態化することになるかもしれない。
低金利の終焉
インフレの常態化に伴って金利が大幅に上昇する可能性が高い。1970年代には日本もアメリカも10%近い金利が常識だった。
資産価格の下落が始まる
金利が大幅に上昇すると、逆に資産価格は大幅に下落することになるだろう。特に借入の影響の大きいい商業用不動産やハイテク株などの成長株は、過去30年のブームが嘘の様にに大暴落することになるかもしれない。
スタグフレーション
インフレと高金利、そして資産価格の影響が長期化すると、可処分所得の減少から景気が大幅に悪化するかもしれない。物価上昇下の不景気、要は「スタグフレーション」だ。
賃金が上昇する
唯一といってもいいインフレ=高金利時代のメリットは、「現役世代の賃金が上昇する」ことだろう。世界的な労働力不足から、労働する力のある人間の賃金は大幅に上昇する可能性が高い。また以前と比べるとLCCやスマホなど海外との障壁もかなり低くなっている。賃金の低い国から高い国に労働者が移動することで、世界的な賃金上昇が起きるかもしれない。
排外主義の台頭
賃金が上昇する一方で、年金や金融資産などのに頼って生活している老人の生活レベルは急激に低下する可能性が高い。日本を筆頭に高齢者比率の高い先進国では、反移民を中心に排外主義的な政治勢力が台頭する可能性が高い。人口に占める老人の比率が高い国では、ファシズムや独裁政治のような状況が出現するかもしれない。既にトランプ大統領や仏独での極右の台頭はこの前触れかもしれない。
人口減少社会の勝者・・・カナダ
では逆に未来の世界人口減少社会の勝者はどの国だろう。意外にもその答えは「カナダ」だそうだ。カナダは米国と並ぶ移民国家だ。しかも社会の分断が進むアメリカと違って、人種や民族の融合がかなりうまく進んでいるそうだ。その結果、今後も世界中から移民を受け入れ続けて、人口が増え続けるらしい。今世紀の終わりごろには、何と人口が今の3000万人弱から5000万人超まで増えるかの制があるそうだ。もちろんアメリカも移民国家であることに変わりはないだろうから、最終的な人口減少社会の勝者は、カナダとアメリカという何の面白みもない結論になる。
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