山口県の阿武町で、コロナ関連の給付金4630万円を町役場がご送金した件が話題になっている。誤送金を受けた男性は、お金の返還を拒否。5月12日には、町役場が男性を民事訴訟で提訴。町役場のホームページで実名を公表したことからSNSなどネットでは、男性の実名や顔写真と呼ばれるものが拡散している。この件に関しては、当初はお金を返還しない男性の非常識を問う声が多かった。しかし、5月16日に男性の顧問弁護士が会見を開き、男性に対する町役場の対応の経緯が分かって来た。町役場の対応を知るにつけ、その対応に数々の疑問点が浮かんできた。そこで、今回は「敢えて男性を擁護」してみたいと思う。
事の経緯
事の経緯は、すでに数多く報道されているが、4月に阿武町がコロナ関連の給付金10万円を振込する際に、総額の4630万円を件の男性の口座に一括振り込みで誤送金したというもの。
男性は返還を拒否
誤送金を受けた男性は、町役場の説得を受けて、一度は町役場の職員と銀行に赴くも、直前で返還手続きを拒否。その後、連絡が取れなくなったとのこと(顧問弁護士は連絡はとれていると、この町の発表を否定)。
男性は、どんな人
件の男性は、24歳の独身男性で、山口県の他の町の出身。移住制度を利用して数年前に阿武町に引っ越してきたらしい。引越後は、地元の企業(ホームセンターとの報道あり)で真面目に働いていたようだ。つまり、この誤送金事件が起きるまでは、地元で普通に真面目に暮らしていたのだ。
町役場が民事提訴し実名公表
お金の返還を拒否されたことから、町役場は5月12日に、男性に対して誤送金した資金と、訴訟費用併せて約5100万円の返還を求めて民事訴訟を起こした。併せて町役場は、訴状の内容を実名を含めて町議会で報告し、町役場のホームページに公表した。男性の実名が、全国に知れ渡ることになった。すでにSNSなどのネットには、男性の名前だけではなく(真贋不明)の顔写真まで多数投稿されている。全国にプライバシーが知れ渡ってしまった。
警察が事情聴取
警察に関しては、5月16日に会見した男性の顧問弁護士によると、男性を2回に渡って事情聴取したとのこと。また併せてスマートホンを警察に任意提出したそうだ。
町の対応の問題点
以上が、この誤送金の概要だが、5月16日に会見を開いた男性の顧問弁護士から、返還を巡る町役場と男性とのやり取りの詳細が分かって来た。そして町役場の対応には数々の疑問点が浮かび上がって来た。
男性の母親に連絡
男性がお金の返還手続きを先延ばしにしたことから、町役場は近隣の町に住む、この男性の実の母親に連絡、お金の返還の説得を依頼したようだ。しかし実の母親とは言え24歳の男性は立派な大人で別人格だ。男性の事情を本人の承諾を得ることなく、他人である母親に伝える行為は、プライバシーの侵害と言われても仕方がない。
職場に押し掛ける
その後も男性がお金の返還を先延ばしにすると、町役場は実の母親を伴って職場に押し掛けてきたようだ。職場の責任者の許可を得たうえでとは言え、勤務時間中に職場の同僚のいる中で、母親と返金の説得をしたようだ。そして職場に居ずらくなった男性は、直後に職場を退職したらしい。
町役場の行為はプライバシーの侵害?
男性の立場から見れば、勝手にお金を誤送金した上で、実の母親を巻き込んだ段階で、プライバシーの侵害になるのではないかと疑問が沸いた。また、職場に押し掛けて返金を迫る行為は、一つ間違えば名誉棄損にもあたるのではないだろうか。町役場が男性の氏名を町役場のホームページに公表した行為も、プライバシーの侵害と名誉棄損に当たる可能背が否定できない。
消費者金融なら役場の行為はアウト
今回の問題は、現在のところ町役場と男性の民事上の争いにすぎない。それを民事訴訟に踏み込んだことを理由に、町役場のホームページに公表する行為は、行き過ぎと言われてもしょうがないだろう。もし当事者の一方が町役場でなくて、例えば消費者金融(要はサラ金)だったらどうだろう。実の母親を連れだして、職場に押し掛けて同僚の面前で返還を迫る行為は貸金業法違反だ。普通は消費者金融業者の方が行政処分を受ける可能性がある行為だ。ましてや今回の事案は、町役場の誤送金がきっかけだ。男性が金を借りたわけではない、普通に生活していたところに、いきなり問題に巻き込まれたのだ。男性が不快感を抱いて返金を拒む気持ちも分からないではない。
町は謝罪と補償をすべきかもしれない
件の男性は、お金は全て使い切ったと弁護士に言っているようだ。ただ普通に考えると全額を短期間で使い切ったとは考えずらい。どこかに隠している可能性が高い。このままでは刑事事件に発展する可能性も否定できない。元々真面目に働いていた男性の人生を狂わせた切っ掛けを作ったのは阿武町の方だ。そして名前を含めたプライバシーがSNSなどネット上に晒されてしまった以上、今後も平穏な生活を送ることは難しいだろう。返還を拒む男性の態度は非常識とは言え、その人生を破壊する切っ掛けを作ったのは町役場の方だ。町役場は、男性にこれまでの行為を謝罪したうえで、ある程度の補償を申し出て、改めて返金を求めるべきだろう。
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