2022年5月も末に近くなってきたが、株価の下落が止まらない。先週末の金曜には多少戻したようだが、基本的に年初から株価は世界的に下落基調だ。そんな中、米国の代表的な株価指数であるS&P500が、日中ベースでは弱気相場入りのサインである20%をつけた。しかし終値ベースでは、寸止めの18%下落で済んだことから、一部では底打ちの可能性を指摘する声もチラホラ聞こえる。果たし株式市場は調整を終えて、再び上昇基調に戻るのだろうか?今回は超個人的な中長期見通しを書いてみたい。
アメリカ株が流行したのはここ10年程にすぎない
ここ数年の株関連のSNSなどを見ていると「アメリカ株万歳」が溢れている。しかし14年前のリーマンショックの時には、「アメリカ経済は終わった」と言われていた。2003年に勃発したイラク戦争の頃は、中国株などの新興国ブームでアメリカ株は全くと言っていいほど注目を浴びていなかった。アメリカ株が明確に上昇し始めたのは、長く見てもここ10年程のことにすぎない。GAFAMに至っては、急上昇し始めたのは、コロナショック後の話だ。
超長期でみれば確かに上昇しているが…
確かに超長期で見れば米国株式は上昇している。インデックス投資では、株式投資の年平均リターンを7%程度としているものが多い。40年、50年、100年というスパンで見れば、平均7%近いリターンを叩き出している。ただし超長期での話だ。直近でも2000年のITバブルの際に付けた高値を米国株が一時的に上抜けたのが、2006年頃。明確に上抜けたのは、2013年になってからだ。さらに株価が2倍以上に急騰したのは、2016年にトランプ政権が誕生した後のことだ。ザックリした話になるが、2000年代には米国株は10年以上低迷していたのだ。
平均回帰の動きが働く
過去10年程でみると米国株のリターンは10%以上ある。明らかに過去の長期定期な平均値を上回っている。ということは、当然のことながら平均回帰の動きが働く可能性が高い。当然「山高ければ谷深し」だ。年平均7%のリターンに収斂するなら、今後暫くは低迷することになる。
GAFAMの高成長も続かない
ここ数年、特にコロナショック後に急騰していたGAFAMに関しても同じことが言える。スマホがやっと普及し始めた10年以上前ならいざ知らず、既にスマホを中心としたIT産業は、人々の生活にガッチリ組み込まれている。当然企業の成長もオールドエコノミーの規模に制限される。特に広告費を中心に利益を得ているGoogleやFacebookのような巨大IT企業の成長は、全体の経済成長の範囲内に制限されるようになるだろう。経済全体のパイが増えない中で、巨大テック企業だけが急成長出来るはずがない。例えばYoutubuはタダだからこれだけ人気を集めている。有料のサブスクを払ってまで、どれけの人がヒカキンの動画をYoutubeを視聴し続けるか考えてみれば自明だ。
40年ぶりにインフレが戻って来た
今回の株式市場下落の一番の原因はインフレだ。しかも、ここ最近例のない水準まで上昇している。アメリカだけならまだしも、日本でも企業物価指数が8%台と1970年代のオイルショックを彷彿とさせる水準まで物価が上昇している。最近投資を始めた若い人にはピンとこないかもしれないが、1970年代には、日本でも10%を超える物価上昇が当たり前だった。
インフレで超低金利は終わり
過去30年程度の市場の推移を見ていると明確に分かることがある。それは「金利が異様に低かった」ということだ。そして、株価が下落する度に「異様な金融緩和」が連続して行われてきた。この「超低金利」の原因については諸説あるが、40年来のインフレが発生している状況を考えれば、まともな金融当局なら利上げで対応するだろう。1989年の「冷戦終結」以来続いた「超低金利」のバブル時代は終結したと考えた方がいいだろう。
中国の低賃金も終了
1990年代末から続いた「世界的低金利」の原因として一番に考えられるのが、「中国の低賃金労働者」の存在だ。しかし中国は2015年から労働人口が減少し始めている。そして早くも2020年代半ばには、日本を上回るスピードで「高齢化」が始まる。今までのように「世界の工場」として低価格の製品を世界中に供給することが出来なくなる。当然のことながら中国での賃金上昇と高齢化は、「超低金利の終焉」をもたらす可能性が高い。
WTOも賞味期限切れ
1990年代以来世界経済は、グローバル化の恩恵を受けて成長をし続けてきた。その原動力の一つとなったのが「WTO」だ。それまで「物」の貿易しか対象にしていなかった国際貿易協定の「GATTO(ガット)」体制から、ソフトウエア―などの知的所有権まで対象を広げたのがWTOだ。このWTO体制の元で、特にIT産業に関する知見や技術が「知的財産権」として世界的に認められたことが、ソフトに強い米国一強をもたらした原動力の一つだ。だが米中対立をきっかけに、このWTO体制にも亀裂が入り始めている。明らかに世界経済のトレンドは「ブロック化」に向かっているようだ。欧米のテック企業は、今までのように世界中から「寺銭」をかき集めることが出来なくなる。
と言っても株式投資は続ける
と言うことで、ここ10年弱続いた「米国株ブーム」は終焉した可能性が高い。ただ株式投資を止めるかと言えば、答えは「止めない」だ。今まで通り「愚直な積立投資」と分散されたポートフォリオによる運用を続けるだけだ。株式市場は終わりかと言うとそんなことも無いだろう。少なくとも市場経済が続くうちは、長期的な成長トレンドは変化がないだろう。問題はそれまで「我慢」できるかだ。人生は長いようで意外に短い。今20代の投資家は、10年後には30代の半ばになっている。その時になって投資を続けていればよかったと後悔しても後の祭りだ。そして、またブームの中で「高値掴み」することになる。
次のブームはロボット?
敢えて次のブームを予想するとしたら何だろう。IT産業の成長が一巡したとして、次に巡って来るのは、どんな産業だろう。一つ考えられるのが「ロボット化」だ。実用化の目途が付き始めた「自動運転」だけではなく、あらゆる産業が自動化されていく世界だ。特に中国の低賃金労働者が枯渇したとしたなら、今までのように「なんでも中国から輸入する」訳にはいかなくなる。それどころか「高齢化した中国」が、輸入し始めるかもしれない。世界的に賃金が上昇し始めれば自動化の大きな原動力になるだろう。また現在行われているウクライナ戦争では、「ドローン」が大量に使用されている。IT産業の嚆矢が1991年の湾岸戦争だったように、最新技術を最初に大規模に使用するのが、コストに縛られない戦争である場合が多い。そして10年後ぐらいには、軍事技術が民生化されることで、多くの産業の「ロボット化」が大規模に始まっているかもしれない。特に少子高齢化が劇的に進んでいる「我が日本」でサービス産業のロボット化が進めば、新たな経済成長が始まるかもしれない。それまで暫くは「我慢の時代」が続くのかもしれない。
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