ウクライナでの戦争が続いています。そんな中、金融市場でも異変が起き始めています。インフレを背景に米長期金利の上昇と、それに連動した円安の進行です。この世界的なインフレと長期金利の上昇は、冷戦終結後長らく続いた「株式の黄金時代」の終焉のサインかも知れません。
過去30年は低金利の黄金時代
30年間金利低下
過去30年近くに渡って世界は低金利の世の中が続いていました。米国の長期金利は1980年頃ピークを付け、その後は40年近くに渡って低下を続けていました。いまの相場しか知らない人には想像し難いかもしれませんが、1980年代の初めには、アメリカの金利は2桁、要は10%を超えていました。それが今やゼロ金利です。因みに日本の金利がピークを付けたのは、確かバブルの最中の1980年代末で、当時の短期金利は8%を超えていました。それが今ではマイナスです。
低金利で株と不動産が上昇
この30年以上続いた低金利環境の中で、世界中で株式と不動産が急上昇しました。逆に原油などの商品価格は低迷することになりました。1991年には、原油価格の低迷が原因で当時のソ連(今のロシア)が崩壊しました。逆に中国は、改革開放政策を実施し、世界の貿易体制に組み込まれることで大躍進を遂げました。
世界的な低金利と商品価格の低下、冷戦の終結による軍事費の減少が相まって、世界経済は過去30年間空前の成長に沸きました。また低金利と成長に伴い、株式と不動産が空前の上昇となりました。
グローバル化の時代
冷戦の終結とともに急激に経済のグローバル化が進展することになりました。まず中国が1989年の天安門事件以降停滞していた国内経済改革を1992年に再始動しました。これを受けて、中国では急激な経済の自由化が進みました。また1989年のベルリンの壁崩壊と1991年の旧ソ連崩壊を受けて、それまで世界経済から隔離されていた東欧諸国もグローバル化に組み込まれていきました。以上の他にも、WTOの発足やEUの本格稼働などが相まってグローバル化が急激に進み、世界的な低インフレと低金利の下地を作り出しました。
戦争とインフレの時代の到来
パンデミックと戦争でインフレが復活
ところが、どうやらこの空前の低金利による成長も、いよいよ終焉を迎えたように思えます。世界的な新型コロナのパンデミックに加えて、今回のウクライナ戦争によって、原油などの商品相場が上昇しています。それに伴って長らくご無沙汰だったインフレが戻って来たようです。米国だけでなく日本でも企業物価指数が8%近くまで上昇しています。
各国の軍事費も増加
戦争の時代の到来と共に各国で軍事費の増加が始まっています。ナチスの反省から軍事に消極的だったドイツまで軍事費の増額に踏み切り、GDPの1.5%以下に抑制していた防衛費を2%以上にするようです。日本でも米中対立や台湾海峡危機に加えてウクライナ戦争を受けて、軍備増強の議論が起きています。そして各国での軍事費の増加に伴い、今まで鳴かず飛ばずだった、軍事産業に巨額の資金が流れ込むことが予想されます。また軍事産業は、一種の公共事業の性格を持ちます。軍事費が増額されると、今まではITなど民間企業に流れていた人材などが、軍需産業に流れることになります。そしてインフレが更に加速する要因にもなります。
株式と不動産には厳しい時代の到来か
最近で長期金利が大幅に上昇した時代を見ると、1970年代まで50年近く遡ります。1970年代は、原油価格の上昇とスタグフレーションで、各国で株式市場が低迷しました。もし同じことが今回起きるとすると、1980年代半ばから続いた米国株式の黄金時代もいよいよ終焉を迎えるかも知れません。
FIREも破綻か
最近流行のFIREなど株式投資を基にしたライフスタイルも、過去30年程度の低金利時代の株式市場のデーターを基に組み立てられているものが大半です。もし長期金利の上昇から株式市場が長期間低迷する場合には、FIREなどの楽観的なライフプランは、容易に破綻に瀕することになるかもしれません。
軍事費増加で得をするのは?
日本は置いてけぼり
各国で軍事費の増加が始まると、ちょうど冷戦時代のように、産業の多くの部分が軍需関連産業に流れます。そうなると主要国は、TVやスマホ、自動車などの民生品は輸入に頼ることになります。実は日本経済が戦後驚異的な成長を遂げた理由の一つが、冷戦下で多くの民生品の需要が日本に流れたことにあります。それなら今回も日本経済は、各国の軍備増強を受けて成長を取り戻すのでしょうか?
漁夫の利は東南アジアとインド
今回はそううまく話がいきそうにありません。日本は少子高齢化が進んでいて、今後労働力不足から、この需要を取り込めない可能性が高いと感じます。その替わりに、今回高成長が望めるのは、東南アジアとインドになる可能性が高いと考えます。東南アジアには既に多くの日本企業が進出しています。民生品を生産する産業基盤が出来つつあり、また大量の若い労働者が存在します。多くの注文が東南アジアに流れるでしょう。また東南アジアで捌ききれない部分や、より低賃金が必要とされる産業はインドに流れるかもしれません。
日本は戦争に巻き込まれるか
そんな中、日本は地政学的に対立する米国と中国の狭間に位置します。冷戦時代ならアメリカの同盟国として多くのメリットを享受することが出来ました。朝鮮戦争やベトナム戦争などアジアで頻発した地域紛争からも多くの経済的なメリットを得ることが出来ました。しかし今回は、そう上手くいかないかもしれません。高齢化と米中間の緊張の高まりが相まって、実際に戦争に巻き込まれるリスクが高まっています。場合によっては、日本本土が戦場になるリスクも高まっています。今回のインフレと戦争の時代は、日本の終焉の始まりとなるかも知れません。
個人としての対策
インフレと戦争の時代に、「ではどうする?」というと、個人的には、分散を更に徹底しようと考えています。資産の分散は既に実施済みですが、それ以外にも住居の分散をはかろうと考えています。日本国内だけでなく、東南アジアなど、日本からアクセスが容易な地域に「第二の故郷」を作って、何時でも避難できる体制を今後数年で構築したいと考えています。
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