FRBの利上げをきっかけとして株式市場が不安定な動きをしている。先週には、コロナによる巣ごもり需要を捉えて株価が急騰していた、コロナ・バブルの雄ともいえるNetflix株が、一日で30%近い大暴落を演じた。この暴落を受けて狼狽している投資家も多いかもしれない。特に最近になって投資を始めたビギナーの中には、そもそも株価がこんなにも急激に下がること自体が理解できない人も多いかもしれない。そこで今回は、「そもそも何で株はこんなに乱高下するるの?」という素朴な疑問に対する答えを紹介してみたい。
会社は元々レバレッジが掛かっている
株式投資をしたことのない一般の人の中には、株式市場が時々急上昇したり暴落したりすることを不思議に思っている人もいるかもしれない。これは、会社自体に「レバレッジ」が掛かっているからだ。レバレッジと言ってもピンとこない人も多いだろう。そこでこれをもっと身近な住宅ローンで考えてみよう。
株式は住宅ローンの「頭金」みたいなもの
身近なもので「レバレッジ」が掛かっている代表例が「住宅ローン」だ。計算しやすくするために1億円のマイホームを1千万円の頭金で買った場合を考えてみよう。要は10%の頭金で借金90%だ。不動産には株式のような公開市場のマーケットが存在しないためあまり意識しないだろうが、当然買った後にも物件価格は変動する。
もし1億円の物件価格が5%低下して9500万円になった場合はどうだろう。もしこの時点で物件を売却した場合には、売却価格は9500万円、借金返済をすると残りは500万円だ。頭金を1000万円入れているので、500万円の損失と言うことになる。もし頭金が株価だとすると株価は50%の大暴落だ。
逆に不動産価格が5%上昇して1億円の物件が1億5百万円になった場合はどうだろう。この時点で不動産を売却しローンを返済すると手残りは1500万円になる。頭金を株価に例えると50%の値上がりだ。
元の不動産の価格がたった5%変動するだけで、株価にあたる頭金の額はプラス・マイナス50%変動する。これが株価が時として急激に変動する理由だ。
株式投資の初心者には、この仕組みをそもそも理解していない人が見受けられる。もし理解しているなら10%~20%程度の変動は当初から織り込み済みで動じないはずだ。
自己資本比率は40%程度
上記の例では頭金を10%の1000万円として計算した。つまり10倍のレバレッジを掛けていることになる。株式会社の場合、業種によってこの自己資本比率は振れがあるが、普通の会社だと平均40%程度だろう。つまり2倍以上のレバレッジが既に株式にはかかっているのだ。殆どの企業が投資家である株主から集めた資金である自己資本(=株式)に加えて、銀行などから「借金」をしてビジネスを膨らませている。株式の年間変動率が20%程度なのは、そもそも会社自体にレバレッジが掛かっているからだ。
株式は借金してのアパート経営みたいなもの
住宅ローンの例では、マイホームの価格変動によって頭金の価格が急激に変動する例を紹介した。ただ自分で住むマイホームだと未だピンとこない人も居るかもしれない。同じ不動産投資でも借金して賃貸アパートを経営するとしたらどうだろう。同じように1億円で例えば部屋数20部屋のアパートを購入する。頭金は同じく1000万円だ。一部屋の家賃は2万5千円、年600万円だ。利回りに直すと年6%と言うことになる。もしローンの利率が3%だとすると利子が270万円掛かるので、実際の利益は330万円程度。
もし借金をせずに頭金1000万円だけだと精々中古のワンルームマンションを2部屋買うのが限界だろう。同じ利回りだと月の家賃5万円で年60万円だ。
この二つの投資に必要な資金は、同じ1000万円だ。ところが借金をしてレバレッジを掛けることで1年間の家賃は10倍、利払いを考慮しても5倍以上にに膨れ上がる。
ここでもし空室が出た場合はどうだろう。例えば50%の空室率だ。そうなると借金した例では、家賃収入が600万円から300万円に激減する。金利分の270万円を差し引くと手残りは30万円だ。満室の330万円と比べると10分の一以下に激減する。損失率は90%を超える。一方、借金なしの場合は、金利の支払いがないので60万円から30万円に50%の減少だ。
会社と不動産の違いは成長
不動産を例にしてレバレッジの作用を紹介したが、株式と不動産で大きな違いも存在する。それは成長率の違いだ。不動産の場合「売上」に相当するのが「家賃」だ。ただ家賃が急激に上昇するということは、早々ない。80年代のバブル期でも家賃自体はそれほど上昇しなかった。
とことが企業の場合には、業種によっては物凄い成長をすることがある。その代表例がIT産業だろう。ビジネスが当たれば数年で売上の規模が10倍どころか100倍にもなり得る。普通の製造業や小売業なら、売上を増やすには工場や店舗の新設が必要になるので成長にも物理的限界がある。しかしIT産業の場合には、いきなり年間で10倍の成長はざらだ。不動産に例えると突然に部屋数が10倍になるイメージだ。もちろん不動産は物理的に部屋を増やさないと部屋は10倍にはならないが、例えばスマホのアプリがバズレば、1銭も追加投資なしで、一晩でユーザーが10倍になることもあるだろう。そして家賃(=売上)が10倍にいきなりなる。そうなると元の建物価値(≒株価)も1億円から10億円になるかもしれない。レバレッジが2倍程度(頭金5千万円)でも、借金の5千万円を引くと手持ちは9億5千万円に急増する。頭金を株価に例えると19倍になる計算だ。これがIT企業の株価が、しばしば一晩で10倍以上に急騰する要因だ。ただし逆にIT企業は一夜にして陳腐化することもある。
トヨタは不動産みたいなもの
一方でトヨタのような会社は、不動産みたいなものと言えるかも知れない。トヨタ自動車は世界中で毎年1000万台弱の自動車を生産している。しかし1年でいきなり販売台数が10倍の1億台になることは物理的に不可能だろう。仮に需要が10倍になったとしても工場の生産能力が追い付かない。この意味でも部屋をいきなり10倍に出来ない不動産に似ているかもしれない。多くの成熟産業の大企業は、既に安定的な売上があり利益も順調に出るだろうが、IT企業の様に急激に売上や利益が増えることは物理的に不可能だろう。逆に言うと株価は急騰もないが急落もない。比較的安定している。
レバナスはレバにレバでレバレバ
コロナバブルを受けて昨年あたりから「レバナス」と呼ばれる、正にレバレッジを掛けた投資信託やETFが一部の投資家の間で流行していた。ハイテク株が中心のNASDAQ指数にレバレッジを掛けた投資信託だ。企業が元々レバレジをかけてビジネスを営んでいることを理解しているなら、この「レバナス」は、レバにレバを掛けていることになる。株価が上昇すれば、一日で20%とかの上昇も有り得るが、下落に転じると「加速度的」に値を下げる。多くのビギナー投資家がこの原理を理解した上で投資をしていたかは神のみぞ知るだ。
結論:株価は変動するもの
ということで、昨今の株価下落でパニックになっている人向けに株価変動に関する簡単な解説をしてみた。もともと株式とはレバレッジが掛かった投資ということを理解したうえで投資をしているだろうか。もしパニックに陥っているとしたら、もう一度足元を見直してみるいい機会かもしれない。
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