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ウクライナで軍事革命が進行中(2)・・・近代国家は戦争から生まれた

国民軍の歴史はたかが200年

今回のウクライナ戦争では、ウクライナ軍の善戦とロシア軍の苦戦が伝えられている。その中で浮上していると思われるのが、従来型の大規模軍隊のオワコン化だ。そして、この近代的な大規模常備軍の陳腐化(オワコン化)は、最終的に近代的案国家の崩壊をもたらす可能性があると考えている。

今の軍隊の歴史はたかが200年程

今現在、各国が保有している大規模な常備軍(国民軍)は、そもそも200年前のフランス革命の時代に登場した形態だ。それ以前の軍隊は、特にヨーロッパでは、軍と言えば金で雇われた傭兵部隊が中心だった。王や貴族の常備軍は非常に少数で、戦争の時だけ傭兵部隊を金で雇っていた。理由は簡単で、コストがかかる事と、国民(=農民)に軍事訓練を施すと、反乱(=一揆)が起こることを恐れていたからだ。それが現在の様に巨大な軍隊に変貌したのは、国民国家が誕生して、大量の兵士をほぼ無料で徴兵できるようになってからだ。この国民軍が実質的に最初に結成されたのが、革命期のフランスで、ナポレオンは、この「大量で安い」国民軍を利用して一時はヨーロッパ全体を征服してしまった。そしてナポレオン敗北後に欧州各国は、このフランス国民軍を模倣して国民軍を組織した。また同時期に始まった産業革命で大量の兵器が供給されるようになると、19世紀半ばから戦争と言えば、大規模な国民軍同士の戦闘になり、世界大戦まで勃発してしまった。

小型兵器で武装したゲリラの時代に

20世紀に入ると2度の世界大戦を経て核兵器が登場したことから、国家同士の大規模戦争はなりを潜めた。その代わりに登場したのが、小型兵器で武装したゲリラ戦だ。20世紀後半の戦争の殆どは、このゲリラ戦と言っても過言でない。特にロシア製のAK47自動小銃(通称「カラシニコフ」)と肩で担いで発射するRPGロケットで武装したゲリラ兵の執拗な攻撃に大規模な軍隊が役に立たないことが繰り返し証明されてきた。その例としては、アフリカで散発的に続く内戦やベトナム戦争、アフガン紛争、2003年のイラク戦争や米軍によるアフガン侵攻など枚挙に暇がない。そして驚くべきことに、このゲリラ戦では、近代的な軍隊が、ほぼ敗北してきている。

ハイテク兵器で武装したテロリストが登場

21世紀になるとゲリラ戦が更に進化した形態が登場した。ハイテクで武装したテロリストの登場だ。2001年に発生した同時多発テロでは、民間の旅客機が「巡航ミサイル」として使用された。大規模な正規軍は、このテロを探知することも防ぐこともできなかった。更に2003年以降のイラク戦争では、当時普及し始めていた携帯電話を起爆装置として使ったIED(簡易爆発物)が、大規模に利用され、イラクに駐留していたアメリカ軍に大損害が出た。

軍隊の民営化、民間軍事会社の登場

ゲリラ戦とテロリズムの激化に併せて登場してきたのが、所謂「民間軍事会社(PMC)」だ。世界の大国の常備軍では、散発的に発生するゲリラやテロには柔軟に対応できない。そればかりか、各国では兵器の高度化が進んでおり、IT化した兵器を操作する能力のある人材の確保が難しくなっている。加えて各国では兵士の高齢化が進んでおり、年金などのコストが財政を圧迫するようになってきている。丁度民間企業がグローバル化で外部委託が進んでいるように、軍隊でも必要な機能の外注化が急速に進んでいる。ウクライナ戦争でも、新型兵器の訓練だけでなく、実際の戦闘にも多くの民間軍事会社が従事している模様。

近代国家とは軍隊のこと

民主主義は戦争が目的

ウクライナ戦争では、戦争のハイテク化や民営化が急速に進んでいるようだ。ここで注意する必要があるのが、今の日本やアメリカなどの国民国家自体が「戦争目的」の制度だということだ。民主主義もその例外ではない。そもそも世界中に今のような国民国家が誕生したのは、フランス革命以降(又はアメリカ独立以降)のたかが200年ほどにすぎない。それ以前は、世界のほどんどの国は、中国やトルコのような皇帝が支配する帝国か、日本やヨーロッパのような封建制国家だった。それが19世紀以降に現代風の国家に急速に変貌を遂げたのは、ズバリ「近代的な大規模常備軍」を維持するためだ。

近代国家制度は殆どが戦争由来

「近代国家=常備軍」の視点に立って近代国家を見てみると、その制度の殆どが戦争由来だと言うことに気付くだろう。列挙してみると以下の通り。

  1. 義務教育:学校は一般の農民を兵士に訓練する施設だ。体育の授業でマラソンするのも、音楽に合わせて行進するのも、よく考えると軍隊そのものだ。また高校で無理やり微積分を習わされたのも、微積分が大砲の弾の弾道計に不可欠だからだ。物理や化学も元は戦争科学だ
  2. 大学:いま世界中にある大学の大半は、フランス革命後に設立された軍事技術研究所だ。日本の東大などの旧帝大や、アメリカのMITなど有名大学の大半が軍事技術研究所だ。
  3. 戸籍:戸籍や住民票、市民IDなども市民を徴兵するための登録制度だ。
  4. 所得税:大半の国で所得税が導入されたのは、20世紀に入ってからだ。目的は当然、巨額の軍事費のファイナンスだ。
  5. 社会保障:年金や健康保険などの社会保障も、兵士が戦死したり障がい者になった時の保証が目的だ。
  6. 医療システム:今や当然の公的医療システムも、健康な兵士を獲得するための手段だ。赤ん坊の時から予防接種を打つのも、健康な兵士を確保し伝染病が蔓延するのを防ぐのが本来の目的だ。
  7. 労働組合:戦争を遂行するためには大量の軍需物資を生産する必要がある。そのためには労働者の士気を維持する必要がある。企業の利潤追求は後回しだ。
  8. 銀行:大規模銀行も戦争目的だ。国民の資源を軍需産業に集中させるには、国民に半ば強制的に貯蓄させ消費を抑制するのが効果的だ。また企業への融資を通じて、企業経営者が利潤追求に走るのを抑制し、軍事物資の確保のために資金を集中させることが出来る。
  9. 大企業保護:企業保護、特に政府による大企業の保護も戦争目的だ。実際に第二次大戦中には、日本でも実質的な財閥解体と産業の集中が実施された。今、日本にある企業グループの大半は、明治以来の財閥と言うより、戦時中になされた産業の集中化の産物だ。
  10. 高速道路と鉄道:高速道路や鉄道なども大量の兵士や補給品を迅速に輸送するためのもので、戦争目的そのものだ。
  11. マスメディア:全国紙やテレビ局などのマスメディアも、当初はバラバラだった国民を統合するために生み出されたものだ。また地域によってバラバラだった言語を統一するためでもある。江戸時代までは、日本でも地方の方言が強くて、日本人同士でも意思疎通が難しかったらしい。いまは、NHKのおかげで、全国民が標準語を理解することが出来る。

以上のように、多くの人が当然と思っている現代国家の社会制度や経済システムの殆どが、大規模な国民の常備軍を維持するのが目的だということが良く分かる。勘違いしてはいけないのが、国家があって国民軍が生まれたのではない点だ。国民軍を編成維持するために、今のような近代国家が生まれたのだ。あくまで先にあったのは「軍隊の編成」ありきということだ。そして多くの人が金科玉条のように信じている「民主主義」も国民軍の登場と歩調を合わせて進歩してきたことは、言うまでもない。

国民国家システムが終焉か

今回のウクライナ戦争は、今のところロシアとウクライナという国家対国家同士の戦いだ。だがハイテクで武装した少数の兵士や民間軍事会社の傭兵部隊が、大規模で近代的な常備軍を打ち破る最初の例になるかもしれない。そうなると大規模軍隊の維持を目的として誕生した、従来型の国民国家システムも長期的に見た場合には不要になるかもしれない。

都市国家が広まる

元々現代の国民国家が大規模な軍隊を前提にしたものなら、軍隊が要らなくなると国家も必要なくなる。その場合、次の国家形態としてまず考えられるのが「都市国家」だ。元々近代的な国家が形成される前の国家とは「都市国家」が主流だった。ギリシャの都市国家が有名だが、ヨーロッパでも中国でも近世までは、都市自体が高い城壁で囲まれていて、都市自体が一つの国家として成り立っていた。

この流れは既に現代でも表れている。有名な例としてはシンガポールやドバイなどが挙げられるだろう。両国とも小さな都市国家ながら非常に高い生活レベルを実現している。シンガポールは既に一人当たりの国民所得で日本を抜いてアジア一位の地位を確立している。また、その軍隊も小規模ならが現代的なハイテク兵器で武装した非常に高度なものとなっている。

巨大帝国が復活

都市国家の次に考えられるのが、ローマ帝国や中華帝国のような「巨大帝国」の復活だ。巨大帝国の正式な定義があるわけではないが、複数の民族、言語、宗教を束ねる巨大国家と言えばいいだろうか。帝国は、傘下の小国家や都市に対して安全保障上の保護を与える代わりに、帝国への服属を要求する。考えようによっては、今のアメリカは既に一種の帝国として機能している。そして日米安保を中心とする日本とアメリカの従属関係も、一種の帝国と属領の関係と言えるかもしれない。この視点に立てば、EUは中世まで存在した「神聖ローマ帝国」の復活であり、中国の「一路一帯」も一種古代の巨大帝国への回帰と言えなくもない。

グローバル企業による実質的世界帝国

次の国家形態として都市国家と巨大帝国を挙げたが、今一つ時代遅れ感が否めないかもしれない。そこで考えられるのが、世界的企業による実質的な世界帝国だ。既存の国民国家自体は名目的に存在するものの、実質的な権力は国家から企業に移行されるかもしれない。

実際に今回のウクライナ戦争でも世界的なSNSプラットフォームが、プロバガンダ戦争の主戦場となっている。また2016年のトランプ大統領誕生で証明されたように、SNSを利用すれば世論を操作することは、比較的簡単だ。つまり民主主義を実質的に無効化できる。

また、世界的IT起業のGAMMAの一角を占めるMETA(旧Facebook)がMETAという独自の暗号通貨を開発しようとしたように、国家主権の重要な一部である「通貨」をグローバルIT企業が発行しようとする動きも出ている。いづれ各国の中央銀行が発行した通貨に代わってグローバルIT企業が発行したデジタル通貨が主流になるかもしれない。

このように国民国家システムが崩壊した後には、IT企業を中心とする巨大グローバル企業が中心となって、一種の世界的な帝国が誕生するかもしれない。

次の投降では、グローバル企業を中心とした将来の世界について夢想してみたい。

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