連日戦争の危機を伝える報道が止まないロシアとウクライナの問題。日本から見ると地球の反対側の話なので今一つ実感が湧かないところかもしれない。しかし、もしロシアとウクライナの間で戦争が勃発した場合に日本に意外な影響が及ぶかもしれない。それはシベリア上空の航空路だ。
予想されている経済制裁
もしロシアがウクライナを攻撃するようなことが起こった場合には、欧米諸国は「厳しい経済制裁」をロシアに課すと警告している。経済制裁の内容として特に注目されているのが、ドル決済システムからのロシアの金融機関の排除だ。一般には知られていないが、世界中の海外送金や貿易の決済などは、「SWIFT(スウィフト)」と呼ばれる決済システムを通して行われている。このSWIFTだが、欧米の主要な金融機関が出資するかたちでベルギーの首都ブラッセルに設立されたもの。国境をまたぐ資金の移動情報はこのSWIFTネットワークを通じで送信されている。すでにロシアに対しては2014年のクリミア半島の併合以来、経済制裁が科されているが、このSWIFTからの締め出しが行われると、ロシア人もロシア企業もドルでの決済が利用できなくなる。またロシア人や企業が海外に持っているドル預金などの資産の移動も実質的には出来なくなる。丁度、太平洋戦争の際に、NYにあった横浜正金銀行(現三菱UFJ銀行)のドル口座を閉鎖されたことが、太平洋戦争の開戦の切っ掛けの一つになったようなものだ。
予想されるロシアの対抗措置は
もしロシアによるドル決済が不可能になった場合には、ロシアも当然対抗措置を講ずるだろう。まず考えられるのが、原油と天然ガスの輸出制限だ。ドイツをはじめとするヨーロッパの大半は、ロシアから輸出される「天然ガス」に頼っている。このガスの輸出が制限されるとヨーロッパは途端にエネルギー不足になる。最近もアメリカから日本に対して、もしもの時には日本が長期輸入契約を結んでいる天然ガスの一部をヨーロッパに融通するように要請があった。ただ仮にロシアが原油や天然ガスの輸出制限をしたとしても、価格が上昇する以外に直接的な影響は今のところありそうにない。
【政府 LNGの一部をEUに融通へ】https://t.co/TEJPlC6v5U
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) February 9, 2022
ウクライナ情勢が緊迫する中、ヨーロッパで天然ガスが不足するのを避けるため、日本政府は国内に必要なLNG(液化天然ガス)を確保したうえで一部をヨーロッパ向けに融通する方針を固めた。バイデン政権の要請を受けた対応。
ロシアがシベリア上空の通過を制限?
あまり話題になっていないが、ロシアの対抗措置としてもう一つ想定されるのが「シベリア上空の通過制限」だ。今や昔の話だが、1991年に旧ソ連が崩壊するまでは、シベリア上空を民間航空機が通過することは許されていなかった。日本などのアジア諸国からロンドンやパリなどのヨーロッパ諸国に行こうとすると、アラスカのアンカレッジを経由するしかなかった。今は12時間前後の飛行時間だが、当時は20時間近くかかっていた。2014年にロシアがクリミアを併合した際には、ロシアが欧州系の航空会社のシベリア上空通過を制限するかもしれないと脅しをかけている。
リスクとして想定しておいた方がいいかも
今のところロシアによるシベリア上空通過制限に関する話は出ていないようだ。ネットやSNSを検索しても2014年当時の記事しか出てこない。しかし、もし経済制裁への対抗措置としてロシアがシベリア上空の通過を制限した場合には、ヨーロッパとアジア間の飛行が大幅に制限されることになるかもしれない。ただでさえ新型コロナのパンデミックでサプライチェーンが混乱しているところにシベリア上空通過制限が加われば、航空貨物の大幅遅延や料金の高騰は避けられない。最悪の場合には、日本から欧州への渡航が大幅に制限される事態にもなりかねない。リスクの一つとして想定しておいた方がいいかもしれない。
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