12月17日の朝10時過ぎ、大阪駅にほど近い北新地の雑居ビルで大規模火災が発生し、多数の犠牲者がでる痛ましい火事があった。
その後の報道で、この大規模火災の原因が「元患者による放火」の可能性が出てきた。また負傷して病院に搬送された負傷者の一人が、犯人の可能性があるとの報道がなされている。
この事件を聞いて「テロ」の一文字が頭に浮かんだ人も多いだろう。
日本は、世界一安全安心な社会を標榜しているが、実は「隠れたテロ先進国」だ。今回は、日本でこれまでに起きたテロ事件を振り返り、今後のリスク管理の一助にしようと思う。
日本は実は世界最先端のテロ大国
「テロ」というと、2001年9月11日のNY同時多発テロなどの海外のテロを思い浮かべる人も多いいかもしれない。世界一安全安心な日本には関係のない、遠い外国の話と思っている人も多いだろう。
しかし実は、海外からは、日本は「世界最先端のテロ国家」とみなされている。日本人が思っているほど「安心安全」ではないのかもしれない。実際に過去に起こったテロ事件を見てみるとそれが良く分かる。
オウム地下鉄サリン事件・・・世界最初の大量破壊兵器による大規模都市テロ
日本でのテロ事件として、まず最初に思い浮かぶのが、1995年に発生したオウム真理教による「地下鉄サリン事件」だろう。日本人の中には、未だに「変わり者集団の新興宗教がおこした変な事件」程度の認識の人も多いかもしれない。
しかし、事件を客観的に見ればわかるが、この地下鉄サリン事件は「世界で最初の毒ガス(大量破壊兵器)を大都市で用いた大規模テロ」だと分かるだろう。言うなれば911のNY同時多発テロと同じ規模の事件だ。また国家の軍隊でない集団が、毒ガスという大量破壊兵器を独自に開発・生産して使用したという意味でも、ある意味時代を先取りした大事件だ。このオウム地下鉄サリン事件は、世界の軍事治安関係者の間では未だに研究の対象となっているらしい。そもそも一民間の宗教法人が、化学プラントを立ち上げ、毒ガスの大量生産に成功した事例は、オウムサリン事件だけだ。
1970年代の日本赤軍
若い人は知らない人も多いだろうが、1970年代にも日本人のテロが世界を震撼させたことがあった。有名なのは「日本赤軍」に代表される極左テロ集団だ。大企業を狙った爆弾テロ、飛行機を狙ったハイジャック事件、外国での大使館占拠事件などを度々起こした。その手法の多くは、その後の中東などでのテロ事件に模倣されたようにも見える。例えばPFLPによるハイジャック、IRAによる金融街を狙った爆弾テロ、ペルーでの日本大使館占拠事件などなど。
また、浅間山荘事件やその前に起きた集団リンチ事件などのカルト集団的な行動や高学歴の人間が多数参加していたことは、最近中東で起きたISISを連想させる。
新宿バス放火事件
これも若い人には耳にしたことが無いかもしれないが、1980年に新宿駅に停車中の京王バスで、ガソリンを使った放火事件が発生している。この事件では、犯人が火のついた新聞紙とガソリンの入ったバケツを新宿駅バスターミナルに停車中のバスの中に投げ込んだ。犯人は新宿駅周辺での野宿していたホームレスで、仕事をなくし生活が破綻した腹いせに、無関係の路線バスの放火した。今回起きた北新地の放火事件や最近のジョーカー事件を彷彿とさせる事件だ。
大阪教育大付属池田小学校事件
次に思い浮かぶのは、大阪教育大学付属池田小学校で起きた小学生を狙った事件だ。犯人とは全く無関係の小学生が襲われ多数の犠牲者が出た。この小学校を狙ったのは、大阪でもトップクラスの名門小学校で、富裕層の子弟で将来のエリート候補が通っていたからと犯人は供述している。典型的な社会的脱落者による反社会階級テロ事件だ。21世紀になって世界中で多発した、大量殺人事件の先駆けと言える。実際その後にアメリカのコネチカット州で小学校を狙った同様の大量殺人テロ事件が起きている。
秋葉原通り魔事件
2008年6月に起きたこの事件は、その直後に発生したリーマンショックと、大量の派遣切りとに関連付けられて、格差の拡大の象徴的な事件として扱われることも多い。
しかし犯罪行為自体を客観的に見ると、トラックを凶器に使い、無差別に犯行に及ぶなど、その後世界で起きた無差別テロ事件の先駆けとも言える。実際その後フランスのマルセイユやドイツのクリスマス市場などで、大型トラックを凶器に使った無差別テロ事件が続発している。
京都アニメ、小田急線、ジョーカー、新幹線・・・ガソリンを兵器に
最近起きた事件で強烈に印象に残っているのが、京都アニメ放火事件だろう。この事件では、京都アニメに自分の作品が盗作されたと思い込んだ犯人が、何の関係もない京都アニメを逆恨みして放火し大量の犠牲者が出た。またその前には新幹線での放火事件や、刃物を使った通り魔事件が起きている。
この事件も客観的にみれば、「ガソリンを兵器に使ったテロ事件」と見ることが出来る。秋葉原事件でトラックが凶器に使われたのと同様に、ガソリンなどの「身近な可燃物を利用した自爆テロ」だ。
この京都アニメ放火事件以降、この事件を模倣したと思われる事件が続発している。一つ目は小田急線での事件。もう一つは、つい最近起きた京王線ジョーカー事件だ。
日本の警察は一般の犯罪として対処
以上のように、日本でも実は、格差や孤独など社会的背景があると思われるテロ事件が定期的に発生してる。しかし、この日本でのテロ対策の特徴として、日本政府と警察は一貫して「政治的なテロ」とは認めないという点が挙げられる。あくまで「ただの犯罪者」として扱い、海外に見られるような強硬な対処は避けてきた。実際に有名な浅間山荘事件でも、当時の警察は、日本赤軍を政治犯としては取り扱わず、単なる殺人暴行立て籠り犯として扱った。逮捕に際しても海外のSWATのような重火器は用いず、機動隊に殉職者が出ても、犯人を生け捕りにして裁判にかけた。
また冒頭のオウム真理教地下鉄サリン事件でも、事前に松本サリン事件が発生、オウムが大規模テロを計画しているとの情報を警察や公安は得ていたが、新興宗教団体による大規模テロ自体が想像の範囲外だったのか、事前に効果的な対策を取れなかった。特にオウムが宗教団体だったことから、既存の新興宗教から批判が出る可能性に躊躇し行動が遅れたらしい。
プロファイリング&AIでテロは防げる
日本政府や企業は、このように頻発する無差別テロ事件に対して、積極的には対応してこなかった。また特に公共交通機関では、あまりに大量の乗客がいるために荷物検査などの対策は不可能だとして、対策を先送りしてきた。
しかし実はこのようなテロ事件を防ぐ効果的な方法がある。それはプロファイリングだ。大量殺人テロの犯人をみれば一目瞭然だが、犯人には一目でわかる特徴がある。それは「男性」「無職」だ。例えば公共交通機関では、女性と定期券を持っている男性を除外し、大きな荷物を持ったプロファイリングに合致する人間だけに持ち物検査などをすれば対策は可能だ。
また近年発展著しいAIによる画像認識などを利用すれば、犯罪を犯す可能性の高い人物をその行動パターンや表情から事前に察知することも可能と言われている。プロファイリング+本人確認+AIを組み合わせれば、混雑する駅などでも効果的にテロ対策をすることは可能だ。
新幹線と国内線のチケット購入にも本人確認を導入を
また新幹線や国内線の航空機、高速バスなどでは、未だにチケットの購入に際して、本人確認が行われていない。新幹線や飛行機がテロのターゲットになる可能性が高いことを考えれば、少なくとも新幹線と国内線の航空機、高速バスなどの長距離線に関しては、チケット購入と搭乗時に本人確認を義務付けるべきだろう。
コロナ禍でこれからも行き詰まる人間は増える
これまでも経済の低迷や格差の拡大など、テロ事件を誘発する状況はあった。そして今回の新型コロナウィルの影響で、これまで以上に行き詰まる人間は増えていく。その中のほんの僅かかもしれないが、凶行に及ぶ人間が出てくるかもしれない。そして東京などの大都市で暮らす限り、いつ自分が事件に巻き込まれるかもしれない。まさに運任せだ。そして政府や企業の対策は、常に後手後手に回る。あとは個人で対策をするしかない。
個人でテロ事件から身を守る方法
日本でも特に都市部では、いつテロに遭遇してもおかしくない。政府や企業がなかなか効果的なテロ対策が取れないとなると、あとは「自分の身は自分で守る」しかない。対処法と言っても下の通り常識的な範囲だ。そしてこの常識的な小さな対策が、いざと言うとき「生死を分ける」かもしれない。
- 電車などの公共交通機関に乗る際には、「スマホ」に集中しない。または使わない
- 人が多い場所では、周囲に不信な人物がいないか常にチェック(危険を少しでも感じたら移動)
- 飛行機や電車、見知らぬ場所では、常に非常口など避難経路をチェック
- 化学繊維などの燃えやすい服は避ける。また肌の露出は極力避ける(動きやすい服装)
- ハイヒールはど、動きにくく、いざというとき走れない靴は避ける
- リックまたはバックなど非常時に盾に使えるものを持つ
- 手袋やマフラースカーフなどで常に体をカバーする(動脈がある部分を露出しない)
- ファーストエイドキットを持ち歩く(止血や包帯代わりになるハンカチやバンダナ)
- ミネラルウォーターなどを常に持ち歩く(傷や目、喉の洗浄に使える)
- 非常アラーム、ホイッスルなど周囲に危険を知らせる道具
- サングラスやゴーグルなど目を保護するもの
- そもそも人が多く集まる場所は、なるべく行かない
コメント